これならば、夜間の住宅地を走行しても住民が不快な思いをせず、しかもFCVはEVよりも航続距離が長く充填(充電)時間も短いため、セブンイレブンのドライバーはどこでも気兼ねなく商品を配送できることだろう。
このほか発表会では、トヨタ自動車製のFC発電機、トヨタエナジーソリューションズ製のリユース蓄電池、豊田自動織機製の給電機能付き充電器の実機も公開されたが、FC発電機はミライのセル、リユース蓄電池はプリウスの使用済みバッテリー10台分を使用。給電機能付き充電器は、既存の充電器に店舗への給電機能を追加し急速充電にも対応したものと言える。
セブン-イレブン・ジャパンは、2020年までにトラック約6千台のうちハイブリッドや天然ガス、電気を含む環境配慮型トラックの比率を現状の約15%から20%へ、2030年には1店舗あたりCO2排出量を現状の72トンから約45トンへ、再生可能エネルギー利用比率を現状の約10%から20%へと引き上げる目標を掲げている。 トヨタはこの取り組みを通じて水素への需要を高めることで、FCVや水素インフラの供給を促進し、生産量を増やすことでコストを削減、需要を喚起するという正のスパイラルを構築することを狙っている。 その第一歩となる今回のFC小型トラックやFC発電機、リユース蓄電池、給電機能付き充電器は、すでにある技術を最大限活用してコストを下げ、信頼性も確保したという点で、極めて地に足が付いたものと評価できる。 ただし、現時点でミライの価格が700万円超とまだまだ高く、コスト面のみを見ても一般に広く普及する水準に達していないことは、トヨタ自身が最も強く認識している。 また、今回試作されたFC小型トラックには、セブンイレブンの現場のニーズが全面的に採り入れられているが、セブン-イレブン・ジャパンの古屋一樹社長は「これは競争ではなく協調の領域なので、ある程度拡大できる段階までテストできたら、競合他社に対してもむしろ積極的に薦めていきたい」と、他社への普及拡大に前向きな意向を示している。 このプロジェクトの開始によって、トヨタはFCVの技術開発において、乗用ユースよりも短期間で成果を得やすい物流の分野へと重点を移したことになるが、これがFCV普及拡大の突破口となるか。今後の推移を見守りたい。