メルセデス・ベンツCLSが三代目へと生まれ変わった。
高性能モデルのCLS53を主軸に試乗記をお届けしよう。
TEXT◎島下泰久(SHIMASHITA Yasuhisa)
PHOTO◎Daimler AG
昨年11月のLAオートショーで世界初公開された新型メルセデス・ベンツCLSのデザインには衝撃を受けた。いや、率直に言えば「CLS、こんな風になっちゃうの?」という思いだったのだ、その時は。
まず視線が向かったのはフロントマスク。逆スラントしたノーズ、台形のラジエーターグリルに、それとの一体感が強められたヘッドライトで構成されたその顔つきは、メルセデス・ベンツの新しいブランドフェイスとなる。
それ以上に驚かされたのが、4ドアクーペのスタイリングだ。アーチを描くようなルーフライン、尻下がりのリヤエンドといったテーマは大枠では継承されているが、ボディ表面からはサイドシルを走る一本を除いて、シャープなエッジやラインが消し去られて、全身が滑らかな線と面で描き出されている。
最初に見た時にはスッキリさせ過ぎとも感じた。特にリヤビューなど小さく、弱く見える感も無くはなかったのだが、今回バルセロナの陽光の下で対面した新型CLSは、その時とは随分違って見えたのだった。
一番のポイントは、光の明暗によってショルダーに前後を貫くラインが現れること。これによって、しなやかさの中に背筋が一本通ったような力強さが加わる。そして、これに目が慣れてくると他のクルマが、なんとも煩雑に見えてくるのである。
テールランプが分割式とされたのはトランクリッドの開口部を拡大するためだ。プロダクトマネージメント担当のセリグ・メリヤン氏は、先代では奥様に使いにくいと怒られたんだと笑いながら話してくれた。
多彩に用意されたラインナップの中でも、もっとも注目すべきはAMG CLS53 4マティック+だ。新型CLSには“AMG63”は用意されず、これが最高峰モデルとなる。
その心臓は新開発の3.0L直6ターボエンジン+電動スーパーチャージャー+ISG(インテグレーテッド・スターター・モーター)である。エンジンは最高出力435ps、最大トルク520Nmを発生し、これに同22ps、250Nmのモーターアシスト“EQブースト”が加わる。ISGは減速エネルギーの回生によって蓄えた電気を、これと電動スーパーチャージャーの駆動に用いる。
回転は至極スムーズで、サウンドも粒の揃ったストレート6ならではの上質さ。ゆっくり流しているだけでも、このクルマは堪らないものがある。しかしながら過給ラグ無しの電動スーパーチャージャーとEQブーストによる瞬発力を一度味わってしまったら、アクセルを踏まずにはいられない。一瞬で始まる仰け反るほどのダッシュは刺激的だ。回すほど活気づく吹け上がりとリニアなパワー感も文句なしの快感。電気の力で、内燃エンジンの歓びが新たな次元に達したわけである。
メルセデスAMG CLS53 4マティック+<CLS450 マティック>
■ボディサイズ:全長5001<4988>×全幅1890×全高1422<1435>㎜ ホイールベース:2939㎜ トレッド:F1647<1618> R1637<1620>mm ■車両重量:1980<1940>㎏ ■エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ 総排気量:2999<2894>cc 最高出力:320kW(435ps)/6100rpm<270kW(367ps)/5500〜6100rpm> 最大トルク:520Nm(53.0㎏m)/1800〜5800rpm<500Nm(51.0kgm)/1600〜4000rpm> ■トランスミッション:9速AT ■駆動方式:AWD ■サスペンション形式:F4リンクR5リンク ■ブレーキ:F&Rベンチレーテッドディスク ■タイヤサイズ(リム幅):F245/40R19(8J)<245/45R18(8J)>R275/35R19(9J)<275/40R18(9J)> ■パフォーマンス 最高速度:250km/h(速度リミッター介入) 0→100km/h加速:4.5<4.8>秒 ■環境性能(EU複合モード) CO2排出量:200<178>g/km 燃料消費率:8.7<7.8>L/100km