アウディは電動車両、e-tornを2025年までに30%以上にするという意欲的な計画を持っている。そこで重要なのが、充電技術とバッテリーマネジメント技術。ドイツ・ベルリンで行なわれた技術セミナーを取材した。


TEXT&PHOTO◎鈴木慎一(SUZUKI Shin-ichi)FIGURE◎AUDI

考え抜かれたバッテリーパックの構造

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アウディ e-tronの電池容量は一般家庭の5日分 アウディe-tronの充電コンセプトとバッテリー技術@ベルリン Part1アウディ e-tron EVの成功の鍵は充電技術が握る@ベルリン Part2

 充電技術の次は、バッテリーマネジメント技術だ。アウディは、リチウムイオン・バッテリーについては、マルチプルサプライヤー戦略を採る。スペックが同等であればサプライヤーは問わない。実際、今回のe-tronプロトタイプに搭載していた電池はLGケム製で追ってサムソンSDI製も使う。バッテリーセルを独自で造らないとなれば、差別化できるのは、バッテリーのマネジメント技術だ。特にサーマルマネジメントとクラッシュセーフティの技術開発にアウディは注力している。

95kWhという大容量のリチウムイオン・バッテリーパック。長さ2.28×幅1.63×高さ0.34mの大きさ。アウディは「ダブルベッドのような構造」としているが、図右側は2階建ての構造となっておりこの上がリヤシートとなる。

 実際、150kWのHPCで充電した際に発生する熱を効率的に冷却できなければ、充電できないどころか危険ですらある。バッテリーの高温化は電池の性能劣化、寿命の短縮を招いてしまう。e-tronのサーマルマネジメントシステムは、バッテリーの温度を25~35℃に保つ。冷却システムは、細かいポートを開けたアルミ押出材と熱伝導性の高いゲルによって、セルが放出する熱をバッテリーハウジング経由でクーラントへ伝える。冷却回路はエアコン、バッテリー、充電器など適温が違うデバイス毎に3つの回路を持ちコントロールされている。ここまで精密にバッテリー管理を行なっているのには、正直驚いた。

バッテリーパック全体の構造は、このようにヒートマネジメントとクラッシュセーフティを考え抜いて設計されている。バッテリーの組立はブリュッセルにあるアウディの工場で行なわれる。

1モジュールには、12個のリチウムイオンバッテリーセルが入っている。36モジュールだから合計で432個セルということになる。バッテリーの形状はアルミコーティングされたポリマー製アウタースキンに包まれたパウチ状。

 安全性については、EVプラットフォームとして、クラッシュにどう対応するかが技術的ハードルだ。バッテリーパックをシャシーの構造材としてもクラッシュ・ストラクチャーとしても考えなければならないのだからだ。バッテリーは35個のボルトでボディに接合されているが、メインテナンス性まで考慮してあり修理の際には車体から簡単に取り外せるようになっている。

押出成形材からなるフレーム構造はハウジング内部を細かく仕切る形で配置され、各バッテリーセルは、その小部屋によって守られている。横からの衝突はマルチロードパスで受ける。

右側が横方向の衝突に対応するクラッシュ・ストラクチャー。「クラッシュ・ストラクチャーは重量が嵩む」とエンジニアは言うが、それゆえほぼオールアルミ製となる。

 エンジニアに訊くと、e-tronを10年使用した後に何%の電池容量が確保できるかは、使用条件によって異なるので明確な数字を言うことはできないが、10年経っても充分なバッテリー容量を持つという。


 今回見せてもらった技術は、今後のアウディの電動化車両にすべて使われていく基盤技術になる。このバッテリーパック、というよりもバッテリーマネジメント、充電システム込みのEVプラットフォームが、今後登場するであろうアウディe-tronファミリーに搭載されていくはずだ。

e-tronのサーマルマネジメントシステムは4つの回路系統からなる。また電気モーターから排熱を効率よく使うヒートポンプとしても機能する。バッテリーは常に25~35℃の温度範囲に保たれる。

バッテリー冷却システムのキモは、マイクロポートと呼ばれる小部屋に分割された押出成形アルミ材でできた冷却ユニットだ。これが熱伝導性が高い新開発の接着剤でバッテリーハウジングに貼り付けられている。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 アウディ e-tron: EVのバッテリー技術で重要なのは熱マネジメントとクラッシュセーフティ@ベルリン Part3