REPORT◎野口 優(Masaru Noguchi) PHOTO◎小林邦寿(Kunihisa Kobayashi)
新型カマロのステアリングを握って、10mも走らないうちに実感するのは、その完成度の高さだ。過去のアメリカ車とは一線を画する出来栄えで、クルマとしての本質を根本から見直しているのがすぐに分かる。中でも特に思わせるのはボディ剛性の高さ、そして軽量化による軽快感だろう。それをもっとも痛感するモデルこそ、実はこのカマロ コンバーチブルである。
何しろ2+2のオープンモデルながら、それなりのスピードで走ってもボディはビクともしない。ルーフがないぶん、シャシーに掛かる負担は大きいはずなのに、クーペと比較してもさほど劣っているように思えないのは、如何にシボレーが今作で気合いを入れて開発したのかが伺える。しかも乗り心地は抜群に良い。マクファーソン・ストラットのフロントサスは、しなやかなハンドリングを実現し、マルチリンクのリヤサスは、マイルドながらも粘るようにパワーを受け止める。前後20インチという巨大なタイヤサイズを履いているにもかかわらず、これだけの安定性と快適性を両立できているのは、めずらしい。数あるオープンモデルでも上位に食い込むくらいである。
だからコンバーチブルであっても遠慮なく“踏める”。エンジンは2リッター4気筒DOHCターボ。275psのパワーと、400Nmというトルクを発揮するから十分だ。ひと昔前のアメ車ファンに言わせれば、イメージ的にネガティブに思われるだろうが、実際はまったくそんなことはないからご安心いただきたい。むしろ、環境保全に対する評価と、それによって可能となる低燃費がもたらす効果に感謝したくなるはずだ。それでもスポーツモードを選択すればパンチ力は実感できる。400Nmものトルクが生むその加速フィールは、昔のアメ車ファンでも納得するのは確実だろう。
とはいえ、この新型カマロのコンバーチブルに相応しい乗り方は、日頃から付き合えるカジュアルさだ。“さらっ”と自身のライフスタイルに溶け込み、格好良く乗りこなせる1台だと思う。電動式ソフトトップの仕上がりも良く、吸音効果をもつ特殊素材を採用しているとあって、クローズド時では車内の会話を邪魔するようなこともなければ、外の騒音もほとんど気にならない。それに、48km/hまでなら走行中にソフトトップを開閉することが可能。街中を走りながら、さり気なくオープンにできるのは格別である。
さらに、このコンバーチブルでもっとも驚くべきは、風の巻き込みが少ないこと。前後のサイドウインドウを下げた状態でも前席はほとんど髪が乱れることはないし、冬場ならウインドウを上げておけば十分にヒーターも効くから1年を通じてドライブを満喫できる。
これだけ完成度が高いコンバーチブルがあるのなら何もクーペを選択しなくてもいいと思う。沖縄の海岸線にあるワインディングを、そこそこのスピードでオープンにして走らせている最中、そんなことを素直に思わせた。実に爽快な気分で、そして軽快な走りの中で……。
《GENROQ 2018年 5月号 特別付録より転用》
【SPECIFICATIONS】
シボレー カマロ コンバーチブル
■ボディサイズ:全長4780×全幅1900×全高1350㎜ ホイールベース:2810㎜ ■車両重量:1670㎏ ■エンジン:直列4気筒DOHCターボ 総排気量:1998cc 最高出力:202kW(275ps)/5500rpm 最大トルク:400Nm(40.8㎏m)/3000〜4000rpm ■トランスミッション:8速AT ■駆動方式:RWD ■ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン 位置:左ハンドル ■サスペンション形式:前マクファーソン式 後マルチリンク ■ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク ■タイヤサイズ:前後P245/40R20 ■車両本体価格(税込):602万6400円
Reported by 野口 優/MASARU NOGUCHI
Special Guest 山崎元裕/MOTOHIRO YAMAZAKI
Directed by 小林邦寿/KUNIHISA KOBAYASHI
Produced by 野口 優/MASARU NOGUCHI
SPECIAL THANKS General Motors Japan Limited
制作 株式会社 三栄書房