これに対して今回開発した成形技術は、所定数の面状ヒーターを金型表面に配置し、真空圧下において部材への接触加熱を用いて加熱の効率化による省エネを実現。さらに各ヒーターを個別制御して各部位に最適な温度分布を付与、残留応力の分布を均一化し部材をより設計通りに近い形状/寸法に成形でき、これによって上記の問題が解消して組立時の労力及び作業時間の低減が期待できる。部材の形状や寸法にもよるが、従来のオートクレーブやオーブンでは、航空機向けなどの大型CFRP部材の成形には約9時間を要しており、これに対して今回開発した成形方法は型の占有時間を4時間程度まで短縮する効果を見込む。また、空気などの加圧・加熱媒体が不要になることで、従来の成形方法に対して約50%の省エネ効果、さらに寸法精度の向上も見込まれ、シムを用いる組立時の修正作業時間の削減効果も期待できるという。
この成形技術の加熱システムを有効に制御するため、東レは愛媛大学と東京理科大学との共同研究を通じて部材の変形予測とヒーター温度最適化シミュレーションをそれぞれ確立。両者を融合することによって部材の成形時間と寸法不良を最小化できる加熱条件設計プログラムも合わせて開発した。現在は試作成形装置を導入し、実証試験を進めている。