軽自動車のエンジンを使った世界最小のフォーミュラーカー・ライトフォーミュラ。その体験走行ができる上に、サーキットレクチャーが受けられる催しが3月に行われた。会場の袖ヶ浦フォレスト・レースウェイで実際に体験した模様をお伝えします。(PHOTO&REPORT:石川順一)

ライトフォーミュラは軽量かつ高剛性のフレームにアルトワークスなどと同じK6Aエンジンを搭載したコンパクトなフォーミュラーマシン。タイヤも一般的なラジアルタイヤを使用でき、積載も軽トラでOKととにかく気軽にサーキット走行を楽しむための設計が貫かれているのだ。




そんなライトフォーミュラを使ったサーキット走行レクチャー&体験会が実は定期的に開かれている。それが袖ヶ浦フォレスト・レースウェイで開催されている「のりもの塾」だ。

シンプルな車体だからこそ、感覚を掴みやすい

今回参加したのは初心者向けの入門塾。主にライトフォーミュラの扱いと挙動になれるためのレクチャーが受けられる。首都高で渋滞にはまってしまい、若干遅れ気味(笑)で会場につくと、あいにくの雨にもかかわらずビィーンと勇ましいエギゾーストの音を響かせながらすでに参加者が軽快な走りを見せていた。




塾長でライトフォーミュラの開発者でもある榎本さんに挨拶をしたのも束の間、「それじゃ走ってみます?」とさっそく試乗を勧められた。一通り座学があってから走るものかと思い込んでいただけにおっかなびっくりステアリングを外してコックピットに収まると、操作方法を一通り説明してくれた。

シートの調整は普通の車と同じシート下のレバーで調整する。かなりタイトで座面も硬めだが、その分ホールド性は抜群にいい。ポジションがおもったよりも楽なためか、1時間近くずっと座っていても特に座り心地の悪さを感じることがなかった。シートベルトはレーシーな4点式でドライビングポジションの安定に一役買っている。

メーターはタコメーターのみ。シフトアップの回転数(6300rpm)がドライバーの目線から見やすいように逆向きに付いている。水温計やライト関係のスイッチが実用性を考えられて配置されているなど、無骨さがレーサーらしい。




シフトレバーは特にカバーもなく、むき出しになっている。しかし通常のフォーミュラカーと違い、市販車と同じ右側にあるので配置に違和感はない。シフトはすこし硬いが、ストロークが短くかなりカチカチと入るので小気味よくギヤチェンジが可能だ。

実践的なアドバイスで疑問点はすぐに解決

エンジンを始動させ、おっかなびっくり走り出すと意外なほど安心感があることに気づく。45mmと低い最低地上高やコンパクトな車体も相まって、目まぐるしく変わっていく景色がスピードをダイレクトに感じさせてくれるのだが、それ以上にマシンとの一体感が高く、意のままに車体を操っている感覚を覚えさせてくれる。アクセルもハンドルも余計なアシストや遊びがない分、自分の操作に応じた挙動を返してくれるし、ノンサーボのブレーキは踏んだ分だけ効く。

ウェットな路面での走行だっただけにタイヤが滑ることは何度もあったが、トラクションが抜ける感覚がすぐにわかるので、「ここでカウンターを当てなきゃ」、「アクセルを踏んでトラクションをかけなきゃ」、「もうムリだからスピンした後立て直そう」と冷静に対処を考えることができた。これは下手にハイグリップなタイヤを履いていない恩恵といえるだろう。車の挙動を学ぶ上では高価な装備を使わずに、こうした市販のもので十分だし、むしろ面白いと感じた。

コースは広い駐車場を貸し切って作られた特設のオーバルコースだったが、前後のコーナーで傾斜が違うのでそれぞれ同じ感覚で侵入すると下りでは曲がりきれず大回りになったりスピンしてしまう、意外とテクニカルなコース。もっとも最初はその違いに気づかずに「なんで曲がれないんだろう」と疑問符をつけながらの走行でなかなかキレイなラインを描けずにいた。そうこうしていると榎本さんがピットから呼び止めて曲がりきれないカラクリを明かしてくれた。「もっと手前でブレーキングしてポールを目指すのはもう少し奥で」など実践的なアドバイスもしてくれるので身に付くのが早い。




大規模なサーキット走行会ではこうはいかない。一人15分も乗ってそれで終わりということもままあるが、のりもの塾では一日の参加者は最大4人。一人一台マシンが与えられるので、思う存分走りを堪能することができる。




1時間ずっと乗りっぱなしだったが、走ってる間はとにかく夢中で榎本さんに呼び止められるまで止まる気にすらならなかったほど楽しめた。ただ、降りてみると結構疲れを感じたので、適宜休みを取ることも気を使った方がよさそうだ。

のりもの塾は入門塾の他に実際にサーキットコースを走る応用走行塾も開催している。入門塾を含め、来る5月、6月にも開催が決定しているので興味のある方は申し込んでみては。一度乗ればそのエキサイティングな体験に魅了されること請け合いだ。

■ライトフォーミュラ SPECIFICATION■


全長/全幅/全高: 2870/1320(1020)/1100 (mm)


ホイルベース: 2010 (mm)


トレッドF/R: 1160/1140 (mm)


オーバーハング F/R: 500/350 (mm)


最低地上高: 45 (mm)


サスペンション/ダンパー: ダブルウィッシュボーン/オイルダンパー


ホイール サイズ: 13×4J (PCD100/OFF SET 42mm)


タイヤサイズ: 155/65 R13 (市販ラジアルタイヤ)


エンジン: 660cc DOHC 12Valve NA


エンジンマネージメント: ノーマル ECU仕様


ブレーキ: 四輪ディスクブレーキ(市販ノーマルパッド使用)


ギアシフトレバー: 左側シフト (オプションで右側シフト変更可)


トランスミッション: 前進5速/後進1速 Hパターン


燃料タンク: 20L
問い合わせ:レーシングガレージENOMOTO/のりもの塾
情報提供元: MotorFan
記事名:「 世界最小のフォーミュラーカーでクルマの挙動を学べる「のりもの塾」