IHIは、アンモニアの製造から利用までをつなぐバリューチェーンの構築を目指し、SIPの支援のもと、アンモニアを燃料として利用する、ガスタービンや石炭火力ボイラの燃焼技術や、固体酸化物形燃料電池(SOFC)のシステム化などに取り組んでいる。中でも、本技術は、国内の電源構成の約3割を占める石炭火力に適用されることで、CO2排出量の削減に大きく寄与すると期待できる一方で、アンモニアと微粉炭が混焼する際には大気汚染物質である窒素酸化物(NOx)の排出濃度が上昇する懸念がある。
IHIは、国内外で高い発電効率および優れた環境性能を誇るボイラを数多く供給してきた。今回の実証試験では、これまでの実績を通じて培った技術力を活かし、既存の発電所に対する小規模な改造で、NOx排出濃度を従来の石炭火力発電所からの排出濃度と同程度に抑制することに成功した。なお、本実証試験は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「エネルギーキャリア*」(管理法人:国立研究開発法人科学技術振興機構/理事長:濱口道成)の委託研究課題「アンモニア直接燃焼」において実施したもの。
今後は、ボイラ性能へ与える影響の評価や運転条件の選定により、NOxをさらに低下させる可能性を検討していく。
*エネルギーキャリア:液化水素やメチルシクロヘキサン、アンモニアなど水素を多く含む物質のことで、エネルギー生産地で合成して、化学的に安定な液体として保存、運搬し、エネルギー消費地で水素を取り出すか、直接エネルギーに変換して使用する。