災害現場での情報収集、建物などのインフラ設備などの点検。クルマと同じように、ドローンは何か作業を成し遂げるための手段となってきているのだ。研究者として、我々はクルマとドローンの関係性とに強く興味を持ったのだ。
まずドローンについて知って欲しいのは、ドローンは国内のみならず世界各国に数え切れないほど存在し、それも日に日に増えているということだ。FAAアメリカ連邦航空局によると家庭用・ホビー用ドローンは現在の190万機から2020年には430万機にまで増える見込みだ。しかもこの数字には商業用ドローンは含まれていない。商業用は2020年には3倍以上の数に膨れ上がる見込みで、家庭用と合わせるとドローン全体数は700万機に増えるという。
ドローン技術は年々ポピュラーになってきてはいるものの、まだ技術としては幼少期だ。ドローンが真の効率的なワークツールとなる前に立ちふさがる大きなハードルの一つが法律の枠組みだ。だからこそ我々フォードは今週のFAA無人航空システムシンポジウムに参加する。自動車メーカーでFAAの立法諮問委員会に参加しているのはフォードが唯一である。これは人やモノ・サービスのための新たな交通網の枠組み構築を率先し、活発な議論に参加することでドローンの持つポテンシャルを最大限に引き出せるとフォードは考えているからだ。
直近の例でいうと、フォードはFAAの委員会に対して飛行中のドローンの識別やモニタリングする方法をいくつか提唱した。我々が提案したシステムは現行のモデルから大きな変更や改良なく飛行中のドローンを把握することができる。FAAは登録されたドローンに対して10桁の登録番号を発行しており、所有者はその番号を機体のフレーム上に見えるように記載しなければならない。しかし、小型のドローンの識別番号は小さく、機体に接近しないと見えないので飛行中は事実上目視で確認できない。そこで、我々はドローンが夜間に飛行する際点灯する衝突防止灯に着目した。
フォードが特許申請中の技術はドローンのライトからASCIIコードの10桁の信号を発信し、飛行中のドローンを統制するというものだ。我々フォードの提案が実現したらドローンの安全で責任ある運用を、ドローンの進化を妨げることなく可能にできるだろう。機体のライトの色や点滅によって飛行状況コミュニケーションを取るだけでなく、特殊なカメラでFAA登録番号も照会できるようなシステムも開発中だ。
Google TensorFlowを使用しているこのシステムで、通常のスマートフォンでも使用できる。街中で不審なドローンを見かけたら一般市民からも通報が可能になるとのことだ。すでに現段階で80フィート離れたドローンを的確に判別できる精度まできている。
FAAとの共同での取り組み以外に、フォードは独自でドローンなどの応用研究を進めている。カリフォルニアのパルアルトを本拠地とするフォードのUAVシステム部門はドローンと自動車の両方が作業できることを想定した開発プラットフォームを制作した。無人機の最低限のハードウェアとソフトウェアを揃えており、ドローン開発の専門家でなくても一定の開発が可能となっている。こうすることでドローン本体を開発・製作するという手間が省け、ドローンの飛行や運用だけに注目することができる。将来的にはオープンソース化も検討している。
自動車会社がドローンの開発をすることは一見不自然に思えるかもしれない。しかし、我々はドローンには十分ポテンシャルがあると感じている。車両に新技術を投入する時、まずその技術で何ができるのかを十分知る必要がある。パーツごとや実車などでテストを行う。今、フォードは同じことをドローンでしているのだ。
ドローンの応用先の幅が広まる中、我々は多くのカスタマーがドローンを積極的に利用したいだろうと考えている。仕事や趣味など理由は様々だろう。会社の内外で開発や枠組み構築を積極的に推進することで、フォードはドローンを有効活用したスマートな社会のグランドワークづくりをめざしている。