「プロではないドライバーがステアリングを握っても、さまざまな状況でレーシングカー並みにの走りを堪能できる」と。
従来の488GTBと比較して大きく異なるのは、90kg軽量化された車重と、50ps高められたV8ツインターボエンジン。488チャレンジ譲りのインコネル製のエキゾーストマニホールドやチタン製コンロッド&フライホイール、カーボン製のインテーク・プレナムなどを追加したことによって720psを実現。デザインにも表れているようにエアインテークやアウトレットなどの変更も加わるだけに、より効果的かつ効率的なエアロダイナミクス性能も持ち合わせている。
特に注目すべきは、アンダーボディのボーテックスジェネレーターを再設計したことだ。リヤディフューザーは、従来に比べてエアの抽出とダウンフォースの発生を改善するために488GTEと同じダブルキンクを組み込み、さらにリヤブロウスポイラーは、より高く長い形状にすることによって最適化されている。こうした変更によって、最終的にダウンフォース量は20%も増加しているという。
そしてもう1つ特筆したいのは、メカニカルセットアップの開発と、SSC 6.0(サイドスリップアングルコントロール・システムのバージョン6)に統合されたエレクトロニックダイナミックコントロールとの相乗効果によって、誰もが車両のポテンシャルを最大限まで引き出し、しかもそれを容易に制御できるようにしたことだ。
このSSC6.0には、電子制御ディファレンシャルのE-Diff3、そしてF1-Trac、SCM(磁性流体サスペンション)、さらに初装備されるFDE(フェラーリ・ダイナミックエンハンサー)のすべてのシステムが組み込まれている。中でもFDEは世界初の機能で、フェラーリが開発したソフトウェアを使用してキャリパーのブレーキ圧を調整するというもの。この制御が実現したことによって、488ピスタのパフォーマンスは従来を上回る正確性を見せるという。
コーナリング中とコーナー出口においても大きなパワーを生み出せるうえ、ハンドリングは、より簡単かつ直感的、かつ予測が可能だと豪語する。システムの信頼性が向上したこともあり、ドライバーは限界付近で走らせてもヨー角を容易に制御することができるという。車両とドライバーの一体感によって、卓越した性能を発揮させながら走りのスリルを味わうことができるようになったと、フェラーリは強く主張している。
さらに、サスペンションのセットアップは、ミシュランがこの488ピスタ専用に開発した新型タイヤによって完璧なレベルに到達したと主張していることも話題だ。しかも20インチの専用ホイールはカーボン製(オプション)。エンジンカバーやバンパー、リヤスポイラーにもカーボンを用いるなど、そのアプローチは、性能に対して本気であることも匂わせる。
そして最後に伝えなければならなのは、この488ピスタがデビューしたということは、488シリーズが間もなく終了することを意味する。仮にこのあと488シリーズに追加されることが考えられるのは、488ピスタのオープンモデルくらい。まだ不明確な点は多いものの、純粋なV8エンジンを搭載したミッドモデルはこの488シリーズが最後になるという噂が濃厚である。
つまり次期V8ミッドシップモデルは、ハイブリッドユニットなど次世代パワートレインが採用される可能性が高い。すでにラ フェラーリでもハイブリッド化を実現しているだけに、そうなるのは間違いないだろう。となれば、この488ピスタの価値が如何に高いかがわかると思うが……。
【SPECIFICATIONS】
《エンジン》
形式:90°V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3902 cc
最高出力:530 kW(720 ps)/8000 rpm
最大トルク:770 Nm/3000 rpm(7 速)
《サイズ &重量》
全長:4605 mm
全幅:1975 mm
全高:1206 mm
乾燥重量:1280 kg(軽量オプション装着車)
《性能》
最高速度:340 km/h
0-100 km/h:2.85秒
0 -200 km/h:7.6秒