豊田通商グループは、世界有数の交通渋滞国のタイ国において、GPSによる単独測位を活用した日本方式の交通渋滞情報生成・配信事業を推進している。GPS受信機を搭載したタクシー(プローブカー)から直接収集される位置・時刻などのプローブ情報を基に生成した交通渋滞情報を、交通情報アプリ「TSQUARE」で配信するとともに自動車メーカーなどへ提供し、同国の社会課題である渋滞の緩和に寄与している。
2.実証事業の目的
今回の実証事業では、「みちびき」と「MADOCA」2の活用により、現行システムでは不可能な車線単位のプローブ情報を収集し、車線単位の高精度ルートガイダンスシステムの実用化を目指す。
なお、みちびきとは準天頂衛星システムQZSS(Quasi-Zenith Satellite System)の愛称で、準天頂の衛星が主体となって構成されている日本の衛星測位システム(衛星からの電波によって位置情報を計算するシステム)。日本版GPSとも呼ばれる。一方のMADOCAとはMulti-GNSS Advanced Demonstration tool for Orbit and Clock Analysisの略称で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した衛星信号補正データ生成システム。複数GNSS (Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム。GPS・GLONASS・Galileo・QZSSなどの衛星測位システムの総称)対応の精密軌道クロック推定ソフトウエア。
豊田通商グループは本実証を通じて、交通情報サービスの向上によるタイ国の渋滞緩和へのさらなる貢献を図るとともに、「高精度測位技術を活用した事業領域」におけるビジネス拡大を狙う。
3.実証実験の概要
本実証実験は、バンコク市内を走るプローブカーに、「みちびき」からの信号と「MADOCA」の補正データを受信可能な「高精度多周波マルチGNSS受信機」を搭載して行う。
従来のGPSに加え、「みちびき」や「MADOCA」から収集するセンチメートル級のプローブ情報を基に、車線単位の高精度交通渋滞情報の生成、高精度ルートガイダンスを配信するための各システムなどの技術評価を行い、最適なルートの提供を目指す。
実証事業期間は2017年12月~2018年4月、現地実証実験期間は2018年3月(予定)。実証地は タイ国バンコク市。
「みちびき」は日本の衛星測位システムであり、政府が提唱する日本が目指すべき「Connected Industries」の中核基盤技術として期待されている。本実証事業は、「みちびき」を活用した次世代物流技術の確立に貢献するとともに、タイ国の長期ビジョン「タイランド4.0」で求められている、イノベーションや生産性の向上、貿易の多角化を通じた持続的な付加価値を創造できる経済社会の実現にも寄与する。