「六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する」
もちろん、これは、立派な刑事罰であり、超過速度に関わらず、すべての違反に適用される。青切符程度の違反に関しては「犯罪」ではないと思っている人がほとんどだと思うが、実は、すべての交通違反は法律上、犯罪なのだ。
そもそも反則金制度というのは「検察官や裁判官の手をわずらわすことなく素直に違反を認め反則金を払えば刑罰から逃れることができる」という特例のシステムに過ぎない。違反を認めず反則金を払わなければ例え10km/hオーバーでも刑事訴訟法により送検され、検察官が起訴に相当すると認めれば裁判となり、有罪になれば裁判所で上記の規定に基づいた刑事罰の判決を受けることになる。ただし、元々、刑事手続きや裁判の煩雑化を避けるために設けられた制度なので、99%以上は不起訴になります。
もちろん、今回のケースは92km/hオーバーの速度違反(赤切符)というれっきとした刑事事件であり、簡易裁判所での略式裁判(罰金を払えば事件はそこで終わる)をすっ飛ばして正式に起訴され、さらに罰金ではなく懲役刑を科せられたということだが、これは特にめずらしいことではなく、また、検察官や裁判官が「悪質」という印象を持ったからというわけでもない。単に過去の数々の判例「80km/hオーバー以上は懲役刑」に基づいたものなのだ。
ただし、では懲役刑の対象となるのは80km/hオーバー以上なのか? というと、そんなことはない。9年前に「78km/hオーバーで懲役6ヶ月(速度違反の罰則の上限!)、執行猶予2年」という判例もあるし、例え50km/hオーバーでも検察官や裁判官が「悪質」と認めれば、懲役刑を求刑され、科せられる可能性はある。数字ではなく、あくまでもケースバイケースであることを覚えておこう。
確かに懲役も罰金も同じ刑事罰であり前科にもなるため、初犯で執行猶予がつくなら罰金を払わなくて済む懲役の方がいいという見方もあるが、公務員法に限らず、私企業の就業規則でも裁判所に起訴され実刑判決を受けた場合に懲戒処分を科すと定められている場合が多い。懲役と罰金は実は大違いなのだ。事実、今回のケースでも執行猶予付きにも関わらず、地裁で出た判決が重すぎるとして、なんと、最高裁まで争われ、刑が確定している。
いずれにしても、もし、当事者になったとしたら、裁判前に弁護士に相談して、罰金刑で済むようにあらゆる手を尽くした方がよさそうだ。