ボルボS60/V60 Polestarのファイナルモデルが発売された。世界限定1500台、うち日本に入ってくるのはS60 Polestarが20台、V60 Polestarが30台の計50台だ。そのうちの1台、V60 Polestarに試乗した。

車重は1790kg 前前軸重:1060kg 後後軸重:730kg

全長×全幅×全高:4670×1865×1480mm ホイールベース:2775mm

Polestarは、1996年にモータースポーツチームとして設立された。その後、ボルボのハイパフォーマンスモデル部門として名を馳せている。BMWのM、メルセデス・ベンツのAMGのような存在だ。




今回ファイナルモデルとなるS60/V60もこれまで継続してPolestarモデルが日本に導入されてきた。


2014年 S60:30台 V60:60台


2015年 S60:10台 V60:40台


2016年 S60:35台 V60:65台


2017年 S60:20台 V60:30台(今回)




このモデルは、レギュラーモデルに、ポールスターのパーツを組み付けたというのではなく、「コンプリートカー」だ。その完成度は、(きっと高いんだろうなぁ)という事前の予想を遙かに超えるものだった。






現行のボルボS60/V60のプラットフォームは、P24という元を辿れば2006年のフォードEUCDプラットフォームに遡る。つまり、10年以上までに作られたプラットフォームなのだ。ボルボ60シリーズのSUVであるXC60は一足先にフルモデルチェンジを受け、ボルボが社運を賭けて開発した新しいプラットフォーム、SPA(Scalable Product Architecture)を採用した。つまり、現行のS60/V60は、モデル末期なのである(先刻承知ですよね。だからPolestarもファイナル)。




日頃、「畳とOSは新しいに限る」と言って憚らないタイプとして、自動車のプラットフォームも新しいに限る、と思っていた。新しいプラットフォームの目的のひとつがコストダウンだとしても、技術の進歩というのは、それを補って余りあるメリットを生み出すはずだからだ。




とはいえ、ボルボの60シリーズに関しては、それが当てはまらない。XC60の先代モデルもとてもいいクルマだったし、モデル末期のS60/V60も素晴らしい。


これをベースに徹底的に手を入れたのが、Polestarモデルなのだから、完成度は想像できたはずなのだが、古いプラットフォームを無理矢理締め上げて出来たクルマなんじゃないか、とも少し疑っていたのだ。

座ってすぐにわかるいいシート。ホールド性も高いのに、それでいて窮屈ではない。

乗ってみて、それが杞憂だとすぐにわかった。試乗させていただいたのは、V60 Polestarである。


まず、シートが素晴らしい。座ってすぐにわかるいいシート。試乗会場を出て西湘バイパスに乗る。相変わらず段差の継ぎ目はひどいが、V60Polestarは、それを一発でいなしてくれる。もちろん、乗り心地が軟らかいわけではない。どちらかといえば硬いのだが、まったく不快ではない。硬いというか、ビシーっとしているのだ。


ダンパーはPolestarとオーリンズによるデュアルフロータイプ。スプリングはR-Design比で80%強化され、スタビも15%強化されている。もちろん、各種ブッシュやマウントも専用品だ。


シートとこのボディと脚周りだけで、ああ、これはいいなぁと思う。

エンジンはDrive-Eのガソリン。スーパーチャージャーとターボで過給するT6と呼ばれるエンジンだ。それをさらにチューンしている。

CFRP製のタワーバーが入る。

エンジンは、これまたボルボが社運を賭けて開発したDrive-E2.0直列4気筒のガソリンT6。スーパーチャージャーとターボで過給して367ps/470Nmを叩き出す。


通常のT6より圧縮比を下げて(10.3から8.6)過給圧を上げる(最大2.0bar)ために、コンロッドの長さを2.2mm短くしている。カムプロフィールは、作用角245度最大リフト量9.36mmに変更(ノーマルT6は229度、8.57mm)。ターボのインペラーの径も4mm拡大された64mmのものを使う。

トランスミッションは、変速スピードを上げたアイシン・エィ・ダブリュ製8速AT。もちろんパドル付き。「Sport」と「Sport+」のモードを備えている。




箱根ターンパイクの登りなら、腕がなくても少しV60 Polestarのポテンシャルを試せる(少しだけです、あくまでも)と思って、まずはノーマルのモードでヒルクライムを始める。次は「Sport」に切り替えて。


「おおっ!」これは楽しい。

じゃあ、せっかくなので「Sport+」も試してみよう(あくまでも登りだけで。貴重な1台でコースオフなんてことは万一にも起こしてはいけないので)。


事前のプレゼンテーションで、この「Sport+」の説明を受けた。「隠しモード」のような手順でSport+にセットしてみる。




・車速0km/h


・シフトレバーを「Sモード」に


・パドルシフトの「+」を引いたまま、シフトレバーを「ー」方向に2度倒す。


するとメーターパネルの「S」マークが点滅して「Sport+」モードに入る。

ボルボS60/V60 Polestar 「Sport+」モードに入れる

おおおおおおっ! このモードになると、もうエンジンの音も違う。シフトポイントは4000rpm以上になり、変速スピードも上がる。このモードはいわば「レースモード」だそうで、Sport+モードで、パドルシフトを行なうと、「+」は解除されてしまう。ドライバーは、とにかく速度管理/ステアリング操作に集中しろってことだ。箱根ターンパイクをV60Polestarで走る。これって本当に楽しい。ブレーキは、371mmのスロット入りローターとブレンボ製6ポット。この制動力(というより制動フィール)がまた素晴らしい。

ボディの外装にはCFRP製パーツが使われている。




すっかり、V60 Polestarが気に入ってしまった。CFRP製のパーツが多用してあっても、それほど、「これ見よがし」感がないのもいい。いいなぁ、これ。


と思って価格表を見てみる。


S60 Polestarが859万円(消費税込み)


V60 Polestarが879万円(同)




V60 T6 AWD Rデザインが634万円だから245万円高ということになるのだが、それ以上の価値は十分ある。世界1500台、しかもファイナルモデルという高い希少性もある。


でも、V60 Polestarの魅力は、その完成度だ。「いいクルマだな。いまドライブしているクルマは、本当にいいクルマだ」と心から思えることだ。




ずっと昔、同じような「ああ、こういうのがいいクルマって言うんだな。すげーな、これ」と思ったクルマがあった。それは90年代半ばのE36型BMW M3だった。今回、V60 Polestarをドライブして、「クルマらしい、本当にいいクルマ」感がした。


限定50台(Sが20台、Vが30台)のうち、すでに半分は受注済みだという。気になる方は急いだ方がいいです。

1500台で、各車にシリアルナンバーが刻印されている。マニア心をくすぐるのがうまい。

Specifications


ボルボ V60 Polestar


全長×全幅×全高:4670×1865×1480mm ホイールベース:2775mm 車両重量:1790kg エンジン形式:直列4気筒DOHCスーパーチャージャー+ターボ 排気量:1968cc ボア×ストローク:82.0×93.2mm 圧縮比:8.6 最高出力:270kW(367ps)/6000rpm 最大トルク:470Nm/3100-5100rpm JC08モード燃費:11.2km/ℓ 車両価格:879万円

情報提供元: MotorFan
記事名:「 ついにファイナル。完成度と希少性にノックアウト ボルボV60 Polestar