販売面で大差をつけられている現状を一刻も早く打破したいという、スズキ経営陣の強い危機感と切実な思いによって、スペーシアが4年10ヵ月という短い期間で世代交代に至ったことをうかがわせた。
ホンダN-BOXが発売された2011年12月以降の各車の販売台数は下記の通り(全国軽自動車協会連合会発表値)。
【ホンダN-BOX】
2011年12月 2,860台
2012年 211,155台
2013年 234,994台
2014年 179,930台
2015年 184,920台
2016年 186,367台
2017年1-11月 200,020台
計 1,200,246台
【ダイハツ・タント】
2011年12月 9,289台
2012年 170,609台
2013年 144,629台
2014年 234,456台
2015年 157,756台
2016年 155,998台
2017年1-11月 132,571台
計 1,005,308台
【スズキ・スペーシア/パレット】
2011年12月 3,884台
2012年 60,136台
2013年 119,432台
2014年 121,091台
2015年 79,376台
2016年 81,277台
2017年1-11月 96,006台
計 561,202台
文字通り「桁が違う」状態だったのである。タントも2013年10月3日に現行3代目となってからは販売を回復し、2014年にはN-BOXを上回り軽No.1の座を手にしている。だがパレットとスペーシアはこの間、販売台数を伸ばし、背高軽ワゴンを軽自動車市場のメインストリームに押し上げるのに貢献したにもかかわらず、一度も首位争いに加わったことはない。しかしながらスペーシアも、2016年12月26日に迫力あるスタイルを持つ「カスタムZ」が追加されてからは、回復の兆しを見せている。
こうして誕生した新型2代目スペーシアは、大きさと存在感、また室内の広さが一目見て分かるよう、デザインが全面的に刷新された。
具体的には、フロントガラスを立ててフードの高さを上げ、さらにベルトラインを高く設定することで、ボディの大きさや厚みを強調。全高を50mm、ホイールベースを35mm拡大した結果、室内幅は25mm、室内高は35mm広くなり、しかも前後席のヒップポイントがそれぞれ30mm、15mmアップしながら前席のカップルディスタンスが30mm、ショルダールームが25mm拡大した。
「遊び心があり愛着が持て、毎日の運転が休日に出掛けるようなワクワク感をもたらすように」という狙いから、スーツケースをモチーフとしたエクステリアは、フラットな中に真っ直ぐな凹凸が入れられた面と、スクエア基調ながら角が丸められたフォルムで構成。シンプルに徹していた先代スペーシアやパレット対し、非常に親しみやすく個性的なデザインに生まれ変わった。
エアロ仕様の「カスタム」は、先代カスタムZのテイストを踏襲しながら、標準仕様と同じくスーツケースのモチーフを採り入れており、押し出しの強さを備えながら遊び心もある内外装に仕立てられている。
なお、室内で最もスーツケースのモチーフが色濃く表現されているインパネアッパーボックスは、ディーラーオプションで計6色が用意されており、好みの色に変えることも可能となっている。
室内は使い勝手も改善された。後席は荷室からもスライド可能になり、格納方法もワンタッチダブルフォールディング式となったことで、軽い操作で素早く格納・復帰できるよう進化。荷室の開口高と荷室高が拡大されることで、フラットなラゲッジフロアに自転車を積みやすくなった。
プラットフォームは現行アルト以降の各軽自動車に採用されている「ハーテクト」に一新され、ボディ剛性アップと軽量化を両立しながら操縦安定性と乗り心地が大幅に改善された。
さらにR06A型エンジンには、最長10秒間のモーターによるクリープ走行を可能にしたマイルドハイブリッドと、約5kg軽量化された新型CVTを全車に搭載。NAエンジンのFF車でJC08モード燃費30.0km/Lを達成した。なお、ターボエンジンはカスタムのみに設定されている。
ボディカラーは標準仕様がモノトーン10色・2トーン4色の計14色。カスタムがモノトーン9色・2トーン5色の計14色。価格は1,333,800~1,908,360円。
スズキ宿願ともいえる、ひと目見て分かる強烈な個性をまとった新型スペーシア。「試乗してもらえれば勝てる」クルマから「ディーラーで実車を見て試乗したい」とユーザーに思わせるクルマへと、間違いなく進化している。