2008年1月28日に発表されたスズキの背高軽ワゴン「パレット」の後継車として、初代「スペーシア」がデビューしたのは2013年2月26日。それから5年を待たずして、2017年12月14日、スペーシアは2代目へとスイッチした。

同日にベルサール渋谷ファースト(東京都渋谷区)で開催された発表会の席で、スズキの鈴木俊宏社長は、ホンダN-BOX、ダイハツ・タントなどライバルとスペーシアとの違いに関する記者からの質問に対し、「先代スペーシアは販売店から『試乗してもらえれば勝てる』と言われていたが、営業を含めた総合力の弱さに加え、デザインにおける大きさのアピールが他車より弱かった」「N-BOXは本当に強い。我々はチャレンジャー、一歩でも足元に及ぶようになりたい」などとコメント。




販売面で大差をつけられている現状を一刻も早く打破したいという、スズキ経営陣の強い危機感と切実な思いによって、スペーシアが4年10ヵ月という短い期間で世代交代に至ったことをうかがわせた。




ホンダN-BOXが発売された2011年12月以降の各車の販売台数は下記の通り(全国軽自動車協会連合会発表値)。

【ホンダN-BOX】


2011年12月 2,860台


2012年 211,155台


2013年 234,994台


2014年 179,930台


2015年 184,920台


2016年 186,367台


2017年1-11月 200,020台


計 1,200,246台




【ダイハツ・タント】


2011年12月 9,289台


2012年 170,609台


2013年 144,629台


2014年 234,456台


2015年 157,756台


2016年 155,998台


2017年1-11月 132,571台


計 1,005,308台




【スズキ・スペーシア/パレット】


2011年12月 3,884台


2012年 60,136台


2013年 119,432台


2014年 121,091台


2015年 79,376台


2016年 81,277台


2017年1-11月 96,006台


計 561,202台
軽自動車のボディタイプ別販売構成比の推移

文字通り「桁が違う」状態だったのである。タントも2013年10月3日に現行3代目となってからは販売を回復し、2014年にはN-BOXを上回り軽No.1の座を手にしている。だがパレットとスペーシアはこの間、販売台数を伸ばし、背高軽ワゴンを軽自動車市場のメインストリームに押し上げるのに貢献したにもかかわらず、一度も首位争いに加わったことはない。しかしながらスペーシアも、2016年12月26日に迫力あるスタイルを持つ「カスタムZ」が追加されてからは、回復の兆しを見せている。




こうして誕生した新型2代目スペーシアは、大きさと存在感、また室内の広さが一目見て分かるよう、デザインが全面的に刷新された。

新型スペーシアの主なデザイン変更点

具体的には、フロントガラスを立ててフードの高さを上げ、さらにベルトラインを高く設定することで、ボディの大きさや厚みを強調。全高を50mm、ホイールベースを35mm拡大した結果、室内幅は25mm、室内高は35mm広くなり、しかも前後席のヒップポイントがそれぞれ30mm、15mmアップしながら前席のカップルディスタンスが30mm、ショルダールームが25mm拡大した。

スーツケースをモチーフとした新型スペーシアのデザインコンセプトイメージスケッチ

親しみやすく個性的なデザインに生まれ変わった新型スペーシア標準仕様のエクステリア
親しみやすく個性的なデザインに生まれ変わった新型スペーシア標準仕様のエクステリア


「遊び心があり愛着が持て、毎日の運転が休日に出掛けるようなワクワク感をもたらすように」という狙いから、スーツケースをモチーフとしたエクステリアは、フラットな中に真っ直ぐな凹凸が入れられた面と、スクエア基調ながら角が丸められたフォルムで構成。シンプルに徹していた先代スペーシアやパレット対し、非常に親しみやすく個性的なデザインに生まれ変わった。

先代カスタムZのテイストを踏襲した新型スペーシアカスタムのエクステリア
先代カスタムZのテイストを踏襲した新型スペーシアカスタムのエクステリア


エアロ仕様の「カスタム」は、先代カスタムZのテイストを踏襲しながら、標準仕様と同じくスーツケースのモチーフを採り入れており、押し出しの強さを備えながら遊び心もある内外装に仕立てられている。

新型スペーシア標準仕様のインテリア

新型スペーシア標準仕様のインテリア
新型スペーシア標準仕様のインテリア


新型スペーシアカスタムのインテリア



ディーラーオプションとして設定されている計6色のインパネアッパーボックス

なお、室内で最もスーツケースのモチーフが色濃く表現されているインパネアッパーボックスは、ディーラーオプションで計6色が用意されており、好みの色に変えることも可能となっている。

自転車を積載しやすいよう開口部下部のガーニッシュにガイドが設けられたラゲッジルーム
自転車を積載しやすいよう開口部下部のガーニッシュにガイドが設けられたラゲッジルーム


室内は使い勝手も改善された。後席は荷室からもスライド可能になり、格納方法もワンタッチダブルフォールディング式となったことで、軽い操作で素早く格納・復帰できるよう進化。荷室の開口高と荷室高が拡大されることで、フラットなラゲッジフロアに自転車を積みやすくなった。

フロントガラス上部に装着されるレーダーレーザー・単眼カメラ一体ユニット

新型スペーシアでは、新たに「スズキセーフティサポート」と命名された予防安全装備も充実している。




フロントガラス上部に装着されるレーダーレーザーと単眼カメラを一体化したユニットにより、従来からの衝突被害軽減ブレーキ「デュアルセンサーブレーキサポート」、誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能、ハイビームアシストに加え、オプションの新機能として進入禁止の標識を認識しヘッドアップディスプレイで知らせる「標識認識機能[進入禁止]」を設定した。

「後退時ブレーキサポート」作動イメージ

さらに、リヤバンパーに4つの超音波センサーを標準装備。後方の障害物を検知し、発進・加速を抑え自動ブレーキを作動させることで衝突を防ぐ「後方誤発進抑制機能」と「後退時ブレーキサポート」を備えている。

カラー表示フロントガラス投影式ヘッドアップディスプレイ

また、スズキの軽自動車としては新型ワゴンRで初採用されたヘッドアップディスプレイ(オプション)は、軽自動車初となるカラー表示のフロントガラス投影式となり、より少ない視線移動で多くの情報が得られるよう進化している。

「全方位モニター用カメラパッケージ」の「3Dビュー」表示画面

そして、前後左右の広角カメラで自車周辺の俯瞰映像をモニターに映し出す「全方位モニター用カメラパッケージ」(オプション)に「3Dビュー」を採用。離れた視点から全体を見渡せる「室外視点」と、対象物に近寄り車体を透かした形で見える「室内視点」の2種類から好みで切り替えることにより、発進時の安全確認が容易に行えるようになった。

新型スペーシアのボディ骨格

プラットフォームは現行アルト以降の各軽自動車に採用されている「ハーテクト」に一新され、ボディ剛性アップと軽量化を両立しながら操縦安定性と乗り心地が大幅に改善された。

マイルドハイブリッドのシステム構成と作動イメージ

さらにR06A型エンジンには、最長10秒間のモーターによるクリープ走行を可能にしたマイルドハイブリッドと、約5kg軽量化された新型CVTを全車に搭載。NAエンジンのFF車でJC08モード燃費30.0km/Lを達成した。なお、ターボエンジンはカスタムのみに設定されている。

標準仕様のカラーラインアップ

カスタムのカラーラインアップ

ボディカラーは標準仕様がモノトーン10色・2トーン4色の計14色。カスタムがモノトーン9色・2トーン5色の計14色。価格は1,333,800~1,908,360円。




スズキ宿願ともいえる、ひと目見て分かる強烈な個性をまとった新型スペーシア。「試乗してもらえれば勝てる」クルマから「ディーラーで実車を見て試乗したい」とユーザーに思わせるクルマへと、間違いなく進化している。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 スズキ・スペーシアが“念願の”超個性的なデザインを持つ2代目へ大幅進化!