日産自動車は、新開発プラットフォームによって優れたデザインと広々としたキャビンスペースを実現した中型プレミアムSUV、新型インフィニティQX50を発表した。注目は、なんといっても、世界初の可変圧縮比エンジンである。日産は同車をロサンゼルス・オートショー(一般公開日:12月1日~10日)に出展する。

可変のためのリンクは大減速比を採れるハーモニックドライブを介して電動モーターで制御。騒音・振動はバランスシャフトなしでもV6エンジンを凌ぐという。ピストンストロークの長い高圧縮比運転では吸気バルブ遅閉じのミラーサイクルで運転する。

「QX50」は、「QXスポーツインスピレーション」や「QX50コンセプト」のデザインを忠実に再現し、空力性能に優れたエクステリアにより、インフィニティ独自の「優雅でありながらもパワフル」なデザインをSUVで表現している。




QX50は、注目すべき点が多い。前輪駆動をベース(つまりエンジンは横置き)にしており、プラットフォームは新開発だ。また、日産得意の自動運転技術「プロパイロット」も搭載されている。

新型インフィニティQX50 ボディサイズ:全長×全幅×全高 4693×1903×1679mm ホイールベース:2800mm



最大の注目ポイントは、やはりエンジンである。


「VCターボ」エンジンは世界初の量産型の可変圧縮比エンジンである。可変圧縮比技術は、ピストンの上死点位置をシームレスに変化させることができるマルチリンクシステムを活用しており、最適な圧縮比に素早く変化する。




負荷に応じて圧縮比を変化させるというアイデアは、エンジンの飛躍的な高効率化をもたらすものとして、過去にもさまざまな試みが行なわれてきた。もちろん、現在も多くのエンジニアリング会社が提案を行なっている。


ミラーサイクルのような疑似可変圧縮比ではなく物理的に圧縮比を変化させる機構を持った乗用車用エンジンとして世界で初めて登場したのが、QX50が搭載するVCターボエンジンだ。2016年のパリ・サロンで発表され、世界中の注目を浴びた。あれから1年。公約通りに新型QX50に搭載してデビューを果たしたわけだ。

QX50はFFベース。つまりエンジンは横置きになる。縦置き用も開発しているはずだ。

燃料供給は、直噴(DI)とポート噴射(PFI)を併用する。圧縮比と運転状況でDIとPFIを使い分ける。高圧縮比でノッキングを回避する際はDIを。低負荷時に効率を上げるためにはPFIを。そして高回転・高負荷時はDIとPFIを併用する。

クランクピンを支点として両側に回転軸を持ったロッカーアームの一端にコンロッドが、もう一端にモーターでレバー比が変更できるリンクレバーが取り付く。モーターが回転するとリンクのレバー比が変わり、コンロッドの大端部位置が上下することで、圧縮比が8.0から14.0まで連続可変する仕組みだ。


ストロークが88.9〜90.1mmの間で変動する。変動幅は1.2mmである。


コンロッドの支点がピンからオフセットしているため、サイドスラストが軽減され二次振動がほとんどなくなることから、バランスシャフトは不要。3.5ℓV6エンジンの代替となる日産独自のダウンサイジングエンジンと言える。もちろん、ターボ過給。燃料供給はDI(筒内燃料直接噴射)とPFI(ポート噴射)を併用する。




パリ・サロンで発表された時は、200kW/390Nmというスペックだったが、QX50に搭載されるVCターボは、200kW/380Nmと発表されている。なお、QX50でVCエンジンと組み合わせるトランスミッションは、CVTだ。




前述したように、登場したVCエンジン(発表資料にはエンジン型式名が明記されていないが、「MR20DDT」となるのではないか)は、横置き用だが、当然縦置き用のVCエンジンも登場するはずだ。

触媒の早期活性化のためにエキゾーストマニフォールド一体のターボチャージャーを採用。電子制御ウェイストゲートバルブ付きのシングルスクロールターボだ。

排気量:1997cc(8.0 CR)ー1970cc(14.0 CR)


ボア×ストローク:84.0×90.1mmー84.0×88.9


圧縮比:8.0-14.1


最高出力:200kW(268ps)/5600rpm


最大トルク:380Nm/4400rpm


燃料噴射:PFI+DI

情報提供元: MotorFan
記事名:「 夢の可変圧縮比エンジン、ついにデビュー!インフィニティ、新型「QX50」