TEXT◎大谷達也(Tatsuya OTANI)
新型コンチネンタルGTを目の当たりにした多くの人々は”より低くワイドに、そして精悍に生まれ変わった”と感じることだろう。
実際、旧型に比べて新型は全高が5㎜低く、9㎜ワイドになっているが、この数字を聞いて「え? それしか変わっていないの?」という疑問を抱いた向きも少なくないはず。そう、実際の寸法はほとんど変わっていないのにエクステリアの印象は大きく変わった。なぜか? その最大の秘密は、新世代に生まれ変わったベントレーのデザイン言語に隠されている。
たとえば、クルマの顔というべきフロントマスク。そのメッシュグリルが従来より薄く幅広くなったことは誰もが気づくはず。さらにグリルの高さそのものをより低い位置に移設。ここに向けてなだらかに下降する曲線をボンネット上に設けることでフロントセクションをより低く見せることに成功したのだ。
ボディ中央部では、フロントセクションから伸びるボディサイドのキャラクターライン“パワーライン”を後方にいくに従って下げていくことで視覚的な重心の低さを表現。リヤフェンダー上のキャラクターラインも“後ろ下がり”とすることで低くうずくまったようなスタイリングを強調している。
なお、新型コンチネンタルGTにもフロントフェンダーの成形にスーパーフォーミングを引き続き採用。これは材料となるアルミパネルを一度500℃以上まで加熱して加工するものだが、これまでのようにふたつの型をあわせて成形するのではなく、空気圧を利用して形状を整えることで、従来よりもキャラクターラインがシャープになり、より深みのある形状に仕上げることが可能になったという。
ところで前述のパワーラインはこれまで前輪の前側から始まっていたが、新型ではこれをポジションランプまで延長することで伸びやかさを強調。さらに、新型プラットフォームを用いて前輪の位置をこれまでにより135mm前方に移したことも、ワイド&ローな全体的な印象を演出するうえで大きな役割を果たしている。
リヤセクションのデザインもスポーティだ。まず、テールエンドを構成する面を天地に浅くコンパクトな形状に設定。これをフロントグリル同様、低い位置に設けることで軽快でスピード感のあるスタイリングを作り上げたのだ。
新型コンチネンタルGTのボディパネルはほぼすべてがアルミニウム製。例外はトランクリッドで、その内側には車両で用いるすべてのアンテナ類を内蔵し、クリーンな外観を実現している。
また、ボディ構造にはスチールとアルミをバランスよく使用したほか、シートパネル、鋳造品、押し出し成形品を組み合わせた高強度構造とすることで、高剛性、耐衝撃性、耐久性などの面で優れた水準を達成。さらにボディ全体をスチールで作った場合よりも20%ほど軽く、合計で85kgの軽量化を図ったという。
ちなみに、こうしたデザイン言語の多くは、2015年のジュネーブショーで発表されたベントレーのコンセプトカー“EXP10 Speed6”から受け継いだものである。
エクステリアのこだわりは、その細部からも見て取れる。たとえば、最新のLEDマトリックス・テクノロジーを採用したヘッドライトは、シャープなエッジが複雑に組み合わされた様子が外側からもはっきりとわかるもので、まるでダイヤモンドのような輝きを見せる。これはクリスタルカット・グラスに着想を得たデザインというが、その美しさにはただただ見とれるばかりだ。
細かなエッジが多数組み合わされているのはテールライトも同様。ただし、こちらは同心円状にいくつもの楕円形が配置されており、それらが立体的に見える工夫が施されている。なお、テールライトのモチーフに楕円形を用いるのはコンチネンタルGTの伝統だが、これまでは四角いコンビネーションライトのなかに楕円形を採り入れていたのに対し、ライトそのものの形状を楕円形としたことが新型の大きな特徴となっている。
テールエンドにBENTLEYの文字がレイアウトされたのは、長いベントレーの歴史でも量産車としては新型コンチネンタルGTが初めて。そんなところにも、ベントレーがこのモデルに込めた自信とプライドが表れているような気がする。