TEXT:高橋一平
2017年2月の発売以来、好評を博している同製品は、超広角の魚眼レンズを用いることで全方位の画像記録を可能としたもの(視野角は垂直方向360度、水平方向194度)。魚眼レンズを用いた画像記録装置はアクションカメラ分野においてすでに存在しているが、これらは車両に搭載した際の条件(車載要件と言われる)には対応していない。主に問題となるのは炎天下の駐車状態において50度をはるかに超える温度で、高性能なアクションカメラ向けのCMOSイメージセンサーでこうした温度帯に対応できるものはこれまで存在していなかった。
そこで同社はセンサーメーカーと共同で、車載要件に対応できるCMOSイメージセンサーを開発、さらに高温動作時にはフレームレートを抑制するという制御を取り入れることでシステム負荷の軽減により自らの発熱量を抑えながら、炎天下の駐車環境下でも録画動作の継続を可能とすることに成功している。ちなみに、一般的なアクションカムを同様の環境下で使用すると、温度上昇に伴い録画が停止してしまうのだという。同社は安価に実現可能なドライブレコーダーの技術を目標に10年以上にわたって研究開発を続けてきたとのことで、プレスカンファレンスで語られたのは2008年には「Sシステム」(前方の車両と白線を認識する機能を持っていたという)という開発呼称を持つプロジェクトが存在していたものの、低コスト化が難しく頓挫してしまったこと(本体6万円、取り付け工賃にも6万円ほどかかってしまう計算だった)、この技術は2011年に発表、リリースされたスマートフォン用のアプリで実を結ぶものの、2013年のモーターショーで発表されたスマートフォンに後方監視用ワイヤレスカメラを組み合わせたシステムは、2015年の発売直前でBluetoothによる接続が不安定になるという問題の発生により断念したという、d’Action360に至るまでの蔵出し秘話とも言える内容。特に2015年の発売断念時は発売まで1カ月という時期で、ワイヤレスカメラのボディを製造するための金型まで用意済みだったとのことで、同社の製品クオリティに対するこだわりが窺えるという意味でも非常に興味深いものだった。
同社のブースでは他にもVUI(Voice User Interface)の搭載により、サンシェードの開閉やリクライニングなどといった部分が音声認識で操作できるというチャイルドシート「コンセプト クルットVO」(参考出品)や、会話可能なAIボット、逆走警告システム(小田原厚木道路にて実証実験を実施中)など、最新の電子技術を応用した取り組みを紹介。1965年に後付け用途のヘッドレストを発売からスタートした同社だが、その軸足は単なる“モノ”を超え、IOT、コネクテッドという分野へと大きく拡がりつつあるのだ。