ちなみに「車両総重量」とは「車両重量」(ノーマル状態の車重+燃料や冷却水、オイル等、走るのに必要なもの)に乗車定員分の人の重さ(ひとりあたり55kgで換算)を加えたもの。例えば50プリウスの車両総重量は約1,650kg。その1.1倍ということはその差165kgまでは架装できるということだ。
しかし、通常、165kgもの架装というとイメージできるのは東京オートサロンなどのカーイベントで見かけるオーディオカスタム車や内装に家具やディスプレイを施した1BOX車やミニバンくらいのもの。ホイールを3インチアップしたとしても重量はさほど増えるものではないし、タービンやスーパーチャージャーを後付けしたチューニングカーでもこの重量に達するパーツを付けるということはまず考えられない(クルマの走行性能をアップさせるのに過剰に重くしてどうする?w)。いずれにしてもショーカーレベルの架装をしない限りこの規定に触れるということはまず、ないと言っていいだろう。
というわけで、平均的なカスタムフリークにはなんの問題もない規定なのだが、それでも物議を醸しだしているのはこの規定があくまでも純正ブレーキ車にのみ適用されるということ。となると、当然、「じゃ、市販のブレーキキット等で制動系を強化しているクルマはどうなるんだ?」という疑問が湧いてくるが、これに関しては一切、触れられていない。その辺のあいまいさが発端となり、今、あちこちで「ブレーキを改造しているクルマは車検に通らない」という根も葉もないうわさが飛び交っている始末だ。
この問題にはふたつのとらえ方がある。まず、「社外ブレーキ装着車は触れられていないのだから関係ない」。もうひとつは「社外品は今後は純正ブレーキと同等以上の性能があるということの証明が必要となる」。が、しかし、今のところはどちらでもないというのが、実は正解なのだ。
事実、独立行政法人自動車技術総合機構(長いってば!)の見解は、「純正ブレーキの制動性能と車両重量の相関関係に基準を設けただけ」であり、別に「社外品に対する規制を強化したわけではない」ということだ。つまり、前回、同じ仕様で車検に通ったのに、10/1以降は通らないということではない、ということ。とりあえず、社外ブレーキ装着車オーナーは安心していいだろう。
ただし、規定がそのまま厳格に運用されたとしたら、社外品装着車は1kgでも重量が増えると車検に通らなくなる可能性がないわけじゃないということはぜひ認識しておきたいところだ。