シート高に着目すると標準的なSは810mm、RとRSは825mmだったが、今回のR LOW は780mm。足着き性に不安はない。しかも嬉しいのは単純にシートを薄くしただけではない、コダワリのある特別仕様が導入された事。
もちろんシートクッションも若干薄肉化されているが、前後サスペンションを専用チューニングして、車高そのものをローダウン。当然サイドスタンドも専用品に換装されての投入だ。詳細解説は割愛するが、φ41mm倒立式のフロントフォークとリヤのモノショック(共にショーワ製)も中のスプリングや調整機構が専用設計されていた。シート高の低減に対して安易な手法にとどめなかったトライアンフの心意気とそのメーカー姿勢は高く評価できるポイントだと思う。
さて去る9月19日に新気投入のR LOW を中心にストリートトリプルの発表試乗会が開催された。試乗会場は富士スピードウェイのショートサーキット。もちろん公道走行もOK。当日はあいにくの激しい降雨に見舞われてしまったが、かえって良い印象を発見することができたと思う。
水溜まりも多い完全ウェット路面だったので、エンジンマネージメントはレインモードでコースイン。当然パワーは控えめで出力変化も穏やかな設定となるわけだが、3気筒独特のトルク感は十分な太さを実感できる。しかも扱いの軽快感はスリッピーなコンディションでも自由自在になるグッドハンドリングに貢献し雨中走行でも不安感が少ない。
それでもスロットルをワイドオープンすれば3速でもテールスライドを誘発する底力は侮れない。もっとも即座に電子制御が介入して車両の安定が保たれるから、ライダーの失敗を防いでくれる安心感も大きい。
頼りになるブレーキもシッカリとした利きと緻密なABS制御が発揮されて不安なく使えてしまう。またコーナリングでは、バイクを深く寝かし込まなくても旋回ラインをイン側へと向ける操作がしやすかった。
結果的に仮にオーバースピードでコーナーへ進入したような場合でも、ブレーキ、操縦性、出力特性の総合力の良さが発揮されて、コースアウトを未然に防ぐ走りがしやすかったわけだ。すべりやすい雨でもビビることなく安心して走れてしまったこと、気持ちが平静でいられた点は高く評価できる。
標準モードで走れば断然パンチの利いた出力特性が発揮され、おそらく一般ストリートでは誰にも負けない一級のハイパフォーマンスが期待できることも間違いなさそう。晴れたドライコンディションで、改めて試乗し再レポートしたいと思ったのが記者の本音だ。