「バージョン2とは、あくまでハードウェアのこと。ここにきて外観上のモトボットが大きく変わったからバージョン2としましたが、搭載されているソフトウェア的に数えたらバージョン150は優に超えています」
それはお見逸れしたが、どうにもモトボットの立ち位置が分からない。2年前同様、人型ロボットがR1Mに跨り、あのバレンティーノ・ロッシを追い抜くんだと粋がる。ヤマハはホンダのアシモを作りたいのか、それともロボットがロッシを負かすというショーを見せたいのか――。しかしこれも筆者の読解力のなさ、勉強不足だったことが分かった。
要は西城氏らプロジェクトチームは、乗り物を運転する人間がどういったときにどんな操作をするのかをモトボットを使って解明したかったのだ。例えばバイクのレースで、走行を終えたライダーがマシンの状態をエンジニアに伝えるとする。「第1コーナーにブレーキをかけて進入していったら、フロントタイヤが三角形みたいになるんだよね」(※筆者が実際に聞いた話)。丸いタイヤが三角形……、これいかに!? といったように、ブレーキをかけてバイクを傾けていくときに違和感があるのは分かったが、その感じ方や表現は人それぞれで、問題解決になんとか答えたいと思っている技術者からしてみれば長く暗中模索だったのだ。
それがロボットであるモトボットがやれば理論的に説明できる。例えばタイヤのグリップ力が落ちてきたなかでコーナリングした際、モトボットはどんな荷重移動やハンドル操作で対処しているのかを数値で示せるのだ。その対象の乗り物が四輪ではなく二輪であることに意味があり、さらにはスピードレンジが高いR1Mで、もっと困難な要求課題に立ち向かうべく追いかける目標をバレンティーノ・ロッシとしたのだ。
使うR1Mは完全ノーマルで、モトボットが運転するからといって、モトロイドのようなバランス制御は全く入っていない。こうした状況下で実験を重ね、課題を明確にし、対処・対応策のスピードアップにつなげられれば、二輪車のさらなる進化が望めるだろう。
「ロッシ現役中に追い抜けますか?」の筆者の問いに西城氏は、「うーん、どうでしょうね」と苦笑いしつつも、「でもロッシの背中は見えてきました。それと同時に、やっぱりロッシはスゴイんだなってことも改めて分かってきました」と笑った。