そんなことから、バッジを変えればどこのモデルかわからない、というのが残念ながら現状だった。
しかしながら、とりわけ注目されたのが、F1テクノロジーから生まれたメルセデス-AMGプロジェクトワン。当ウエブでも既報だが、ここではデザインの視点で見ていこう。 このスタイリングはややもすると気がつかないところだが、運転席後方から、リヤエンドにかけての低さ、コンパクトさが特徴だ。通常同じようなパフォーマンスを内燃機関で与えようとすれば高性能の大排気量V8やV10エンジンが必要となるが、その場合にリヤ周りもはもっと大きく長くなってしまう。 実は小排気量ハイブリッドだからこそ実現できたパッケージであり、このリヤ周りのボリュームバランスが、フロントの造形に影響を与えている。通常のハイパフォーマンスカーに比較して、やや押し出しが弱く感じるのはそのため。しかしいろいろな角度から見るほどに、そのセンシャルな造形が感じられるようだ。 ではそのパッケージはどのようになっているのだろうか。ミッドに搭載された1.6L V6エンジンをベースに、4つの電動モーターを採用。一つはエンジンのクランクシャフト、一つはターボチャージャー、そして残りはフロントタイヤを駆動する。エンジンがなんと500kW、フロント駆動が240kWで、併せて720kW(約1006ps)を発揮するという。フロントの電動モーターはインホイールではなくボディ側にマウントされ、ばね下重量を抑えている。リチウムイオンバッテリーは、床下にマウントされるがフロントアクスルの後ろ、乗員の足下とすることで良好な冷却性能と低い慣性モーメント、最適な重量配分、低い全高を実現している。
そして、F1なみの長いサスペンションアームも注目だ。前後ともマルチリンク式となるが、注目は写真にもあるようにストロークの十分取られたばね&ダンパーだ。このモデル自体それほどのサスペンション・ストロークは持たないが、その短いサスペンション・ストロークに対して長いばね&ダンパーストロークを持とうとするもの。高い追従性が狙いで、超ハイパフォーマンスにして上質の乗り心地が期待できる。 またフロントサスペンション、リヤサスペンションはサブフレームにマウントされるが、リヤサスのサブフレーム内側には縦置きの8速トランスミッションを抱え込む。トランスミッションのボディはカーボンファイバー製で前方に固定されたエンジンとともに、サスペンション剛性を確保する構造部材ともなっているという。 これらハイテクノロジーを最小限に覆ったのが、ボディスキンだ。ここまでエキサイティングな内容であったのに、このボディだけは不可解。最大限の効率と最良の空力性能を持って開発されたものであるとのことだが、メルセデスらしさを見出すのに困難だ。今後のメルセデスに活かされるテーマが内包されている可能生はあるが、現在は不明。ショーカーとしては、せめてディテールだけでも、メルセデスらしいアイコンを残す、あるいは生み出して欲しかった。