日立オートモティブシステムズは、この技術を搭載した自動運転ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)とソフトウェア開発キットを2017年11月より提供予定だ。
今後、日立と日立オートモティブシステムズは、シミュレーション技術を利用したテスト環境の構築など、自動運転用アプリケーションの開発過程における効率化技術の提供により、安全な自動運転社会の実現に貢献していく。
現在、前方障害物をカメラやレーダーなどのセンサーで検知し、自動でブレーキをかけるといった自動運転技術が実用化されており、車両の走行を制御するアプリケーションを自動運転ECUで実行している。今後のさらなる高度化に向けて、前方だけでなく車両周辺を360度センシングして、車線変更や追い越しなど、さまざまな走行を自動で制御するアプリケーションの開発が進んでいる(図1)。
アプリケーションの開発過程で不具合が見つかった際、従来は、車内ネットワーク上に流れるセンサー情報が記録された外部記録装置の中から、該当するセンサー情報を、記録されたタイミングで自動運転ECUに入力することにより、不具合を再現し、原因を究明していた(図2:従来方式)。数10ミリ秒周期で実行されるアプリケーションの不具合を確実に再現するためには、その実行タイミングまでにアプリケーションに入力されるセンサー情報を再現する必要がある。しかし、従来方式では、センサー情報の入力タイミングを自動運転ECU外部で再現するため、自動運転ECU内部のアプリケーションの実行タイミングに同期させてセンサー情報を入力することはできない。そのため、自動運転の高度化にともってセンサー情報が膨大化していく将来、アプリケーションに入力された大量のセンサー情報を不具合発生時と同一タイミングで再現することは難しくなり、不具合の再現が困難なケースが増加し、テスト工数の急増が懸念されている。
そこで、日立と日立オートモティブシステムズは自動運転車向けのアプリケーション開発を効率化するリアルタイムデータベースを活用することで、アプリケーション実行タイミングとセンサー情報入力タイミングを高精度に記録して再現する技術を開発した(図2:本方式)。従来方式では記録時と再現時で最大数10ミリ秒のタイミング誤差が発生していたが、この技術を用いることで約10マイクロ秒に抑えることが可能となる。