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サスペンションからホイール、マフラーにボディ補強パーツまで。足に関わる用品をここまで幅広く展開しているメーカーは、世界でも稀な存在だ。そんなタナベはどう生まれ、成長してきたのか。そのモノ作りへのこだわり、信念に迫る。
タナベのホイール事業部であるSSRは、3ピースの組み立てホイールを重視する。正直3ピースは1ピースと比較して、かかるコストも手間も、圧倒的に大きい。それでも高級3ピースにこだわり続けるのは、なぜか。SSRの原点、3ピースへのこだわりを探る。
人の手を介し作るからこそ高い品質を維持できる。
まずはSSRの3ピースホイール製造過程を見てみよう。まずはディスク。SSRでは、溶解されたアルミを職人の手によって丁寧に型に流し込み成型したものを採用。
長年の経験とノウハウを徹底した鋳造条件によって安定したものを素材として導入している。これは間違いのない良い素材にこだわる、というタナベの理念に沿ったもの。
この素材をNC旋盤機にかけ、表側と裏側に仕上げの削りを施す。
3ピースは異なる部材を組み合わせるため、ここでの精度が何よりも重要。リム勘合部、裏側のハブとの接触面など、個体差も考慮しながら職人がチェック、ひとつずつ仕上げていく。
古くからあったヘラしぼりという技術が進化して誕生したスピニングという製法。その技術をいち早くホイールに導入したのがSSRで、アウターリムやインナーリムの製造などに導入されている。
マニュアル式、プログラミング式のスピニング機2機種が工場には整備されているが、いずれも豊富な経験と知識を生かした職人の調整が必要となるため、かなり希少な製法だ。
ちなみにリムの材料、材質、厚みなどはモデルやサイズによって異なるため、複数の材料を使い分けているそう。どれももちろん厳しいタナベ基準で厳選された、信頼ある素材となる。
例えばインナーリムには、軽くて強いリムを実現できる熱処理材を使用。熱い釜に2度入れて焼き、必要な成型を加えてもう一度焼くという手間が必要。これもこだわりのひとつだ。
3ピースの組み立ても、職人の手作業。アウターとインナー、ディスクを、1本1本調整しながら人の手で組み上げていく。さらにアウターとインナーの接合部は、剛性向上とエア漏れの確実な防止を目的に、溶接と、シーリングを施し、組み上げ完了。
大まかな工程紹介だが、その手間、少し感じていただけたか。
メイドインジャパンでしかできない製法だから、やる。
タナベは、特にSSRは、安全安心が根幹なのはもちろんだが、製品の軽さにこだわるメーカーだ。
しかし3ピースは複数の部材を組み合わせるのだから当然、1ピースと比べれば重量は増す。それを踏まえても3ピース、なのは、それが日本だからこそ、完成度の高い製品を作れるから。
アウターリムとインナーリム、ディスク、ピアスボルト。これら3ピースを構成する部材はすべて、別の機械で、別の職人がひとつずつ製造する。それを最終的にひとつに組み合わせるのだから、完璧な精度が求められることは想像に難くないはずだ。
その精度を実現する技術が、SSRにはある。もちろん不純物を含まない最上の素材、きめ細やかで繊細な表面処理なども、日本ならではの価値。そうやって手を尽くして完成させるモノが3ピースで、だからこそ高級で優越なのだ。
ユーザーにとって分かりやすいメリットとしては、表面処理を変えられることだろう。エグゼキューターCV05/05Sを例に、その点も少し解説しよう。
CV05/05Sの標準ディスク色は、クリスタルシルバーとギャラクシークリアブラックの2色。しかし多彩なオプションカラーが設定されているため、ブロンズやガンメタなど、ユーザーの好みに合わせたカラーオーダーが可能だ。
さらにリムも、標準のアルマイトだけでなく、ブラックアルマイトへの変更が可。ピアスボルトも7種類から選べる。
つまりその組み合わせ方次第では、絶対に人とカブらない、自分だけの高級品を手に入れることができるということ。リム交換が可能なのは、メリットだ。
そもそもSSRは、世界初の3ピースであるマークⅠから始まった。つまりその原点は、3ピース。日本が誇る構造で、自由度も高い。そこが一番の魅力。
オーバーヘッド構造
サンドイッチ構造
1ピース
2ピース
スタイルワゴン2020年5月号より
[スタイルワゴン・ドレスアップナビ]