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北海道から沖縄までバスと船で縦断したら、どれくらいの日数と交通費がかかるんだろう。
テレビ番組「水曜どうでしょう」の人気企画「サイコロの旅」を観ながら思ったことがあります。
6つのサイコロの目にそれぞれの移動手段と行き先を割り当て、サイコロを振って出た目に合わせて旅をするというもの。その移動手段の選択肢に、よく登場するのが高速バスです。
札幌から函館までの深夜バス「ニュースター号」も東京から博多まで日本一長い距離を走る高速バス「はかた号」も、この企画で知りました。
改めて調べてみると、日本では毎日2000便以上の高速バスが走っています。これだけあれば日本縦断できるはず。北から行くか南から行くか? どこで乗り継ぎ、どの船に乗るか? など考えていくとルートは無限。
……と、中部国際空港で名古屋メシ「味噌カツサンド」の空弁をつまみながら旅のスケジュールを組んでおりました。
しばらく飛行機とはお別れですね。
やはり、この企画を思いつかせてくれた「水曜どうでしょう」に敬意を表し、番組を制作しているHTB(北海道テレビ)からスタートしようと札幌に飛びました。
札幌市内に到着した時は既に夕暮れ。番組のオープニングに登場する、HTB近くの「平岸高台公園」に立つと、ふつふつと旅の始まりの高揚感が沸いてくるのでした。
その時、一つだけ誓いました。「いくら滞在時間は短くても、できる限りその土地の食べ物は味わうぞ」と。
まずは腹ごしらえのために二条市場へ。記念すべき、0泊5日の旅の一食目は、羅臼産の大型ほっけ定食を大盛りのご飯で。
こうして23時35分市電すすきの前発の深夜バスに乗り込みました。
なにごともなく早朝5時30分函館に到着。爆睡でした。
降車後、目覚ましがてら函館港の周囲を1時間ほどかけて散歩し、一旦、函館駅前に戻ります。
あらかじめ調べておいた港までのシャトルバスの時間を確認し、朝市で朝食を……と思いながらバス停の時刻表を眺めていると、シャトルバスは予約した青函フェリーには行かないことが発覚。
同じ津軽海峡を渡るフェリーは2社あり、出発する港は互いに離れているのです。
港まではタクシーで向かいました。何とか8時10分発のフェリー「あさかぜ21」に乗り込み、青森へ。結局、朝食は前日、札幌でおやつ用に買っておいた24時間営業のサンドイッチ専門店「サンドリア」のダブルエッグハムサンドとなりました。
松前半島や下北半島など入り組んだ地形を目で見ながらの航海、しかも運賃は1,400円(スマホの割引クーポン提示)とリーズナブル。
4時間の航海の間に船内でシャワーも浴び、貸し切り状態に近い3階の客室で、ヨガやストレッチをしながら、身体もしっかりほぐしました。
青森フェリータミーナルに12時10分到着。
青森駅までシャトルバスで移動し、本日の移動と宿泊を兼ねた東京に向かう深夜バス「ラ・フォーレ2号」の乗り場を確認。出発は21時。
出発までの時間は、レンタサイクルで青森市内を散策したり、地元食材やお土産が揃う商業施設「A-FACTORY」をのぞいたり、ご当地B級グルメ「味噌カレー牛乳ラーメン」を堪能したりと、青森観光を満喫しました。
さらに、高速バス乗り場から徒歩7~8分のところにある「まちなか温泉」で深夜バスに乗る前にひとっ風呂浴びました。
ここには露天風呂もあり、入浴料も450円とリーズナブル。特に広いサウナが私のおすすめ。タオルなどの貸し出しセット(有料)もあるので、手ぶらでも大丈夫です。
また、少しマニアックですが、映画好きなら「まちなか温泉」近くにある映画館「シネマ・ディクト」もおすすめです。
上質な映画をセレクトしているので、ここで2時間楽しむのもあり。
もちろん作品にもよりますが、18時台の上映なら、出発時間前にいい頃合いで終わりますからね。旅先の映画鑑賞は普段より心に刺さります。
温泉と映画を楽しんだ後、バスへ乗り込み東京へ向けて出発しました。
東京駅に6時35分到着。次は、いよいよ「キング・オブ・深夜バス」と呼ばれる「はかた号」で東京から博多まで約1,100キロの距離を約14時間かけて走り抜けます。
出発は21時。
この日は、東京駅一番街にある老舗の果物店「千疋屋」にて、身体に優しいフルーツの朝食をいただき、パンダの赤ちゃん「シャンシャン」が生まれた上野動物園に行ってぶらつき、ついでに上野の老舗銭湯「燕湯」で早めに入浴を済ませるなど東京を満喫。
そして一日約1,200本のバスが乗り入れるバスタ新宿へ移動します。
さすが「キング・オブ・深夜バス」。今まで数え切れないほど深夜バスに乗っていますが、「トイレ休憩」ではなく、「洗顔休憩」なるアナウンスを初めて聞きました。
次の「桜島号」で九州を縦断すれば、北海道から鹿児島まで旅をしたことになります。旅の山場も超えたことだし、4日間で約37時間の移動で多少、身体も疲れてきたので、ここらで一休みを考えました。
鹿児島で桜島が見える温泉宿で一泊してから船で沖縄に向かおう。改めてスマホで船のスケジュールを確認……世の中、そんなに甘くはありませんでした。鹿児島から沖縄までの船は毎日運航しているわけではないことに気づいていなかったのです。今日を逃がせば、次の出発は2日後。
すぐに予定を組み直します。博多駅下車予定でしたが、一つ手前で降りることに。
こうして西鉄天神高速バスターミナル11時2分に降車変更。
降車後、西鉄天神高速バスターミナルの乗車券売り場へ。この旅で初めて走り、数十分後に出発する鹿児島行のバスチケットを購入しました。
博多で行きたかった定食屋をあきらめ、出発出口ゲートのスターバックスで、スコーンとコーヒーを口にし、11時52分の「桜島号」で鹿児島へ出発。
そのかわり、途中で立ち寄るサービスエリアで福岡、熊本、宮崎の特産品のおやつでお腹を満たしていきました。高速バスの昼移動は、これが楽しい。
車窓からは阿蘇山も見え、鹿児島中央駅に近づくと桜島も見えてきます。
高速船バスターミナルに16時30分到着。
鹿児島と沖縄を結ぶ「クイーンコーラル8」の出港は18時。1時間半あれば大丈夫だろうと思い、乗船券を買いに行くと、窓口の係員は、このターミナルは種子島や屋久島に行く船の乗り場で沖縄行きは違う港だと言うではありませんか。しかも3キロも離れているというではありませんか。
すぐにターミナルを飛び出し、目の前に停まっていたタクシーに乗り込み、鹿児島新港ターミナルへ。
乗船券を購入し、5分後には乗船開始。
なんとか船に乗ることができ、沖縄へ向かうのでした。そして船メシのチキン南蛮定食。思えば、この日、きちんとした食事は、これが初めてでした。
日本縦断旅の最終日は、デッキの朝日から始まりました。船は奄美大島、徳之島、沖永良部島、与論島の順で寄港し、そして沖縄本島へ。16時40分本部港へ入港。そのまま乗っていれば那覇港まで行きますが、僕は下船。やはり最後はバスで到着したい。
本部港前からやんばる急行の高速路線バスに乗って那覇へ向かったのです。
高速バスの途中で立ち寄った伊芸サービスエリアで沖縄ブランド「ブルーシールズ」の「さとうきび」フレバーのアイスクリームを手にした時、沖縄に入ったことの安堵感と、旅の終焉に向かう寂寥感を憶えました。
バスは19時45分に那覇市内の県庁北口に到着。
終着地もHTB(北海道テレビ)で馴染みのある場所で締めることにしました。
翌朝、「水曜どうでしょう」の大泉洋が出演する番組「おにぎりあたためますか?」で訪れた那覇市内の第一牧志公設市場へ。1階で沖縄らしい青い魚「アオブダイ」を購入し、2階の食堂で調理してもらい、それをつまみにゴーヤビール。
これで一人祝杯をあげ、この旅を終えたのでした。
今回、函館駅から青函フェリー乗り場と鹿児島高速船ターミナルから鹿児島新港まではタクシー、クイーンコーラルは2等寝室を利用しているので、多少交通費が高くなっています。
また、バスも定価で購入しているので、早割などを使用すれば、もっと安く抑えられると思います。
「もう一度やりますか?」と言われたら、「やります」と答えます。それくらい快適な旅でした。トラブルはありましたけどね。それはどれも僕の不注意。
もちろん深夜バスでははかた号のビジネスシートや、ニュースター号、ラ・フォーレ号など三列シートを使用していたことも大きいでしょう。また、途中で船旅があるので、身体をフルフラットの状態で休めることができたことも大きい。
とはいえ、那覇市内のホテルに到着し、部屋で鏡を見たら目の下にクマができていたので、それなりに疲れていたんでしょうね。5日間ではなく、ホテルを挟んで1週間あればさらに到着地の観光や食べ物を満喫できる日本縦断旅になると確信しました。
今度は南から北へ向かう旅、日本海側を周る旅、もう少し細かく刻んだ旅、縦断ではなく、四国も含めて、ぐるりと一周する旅など……考えていくと日本を高速バスで楽しむ日本縦断の旅は、まだまだ無限にありますね。
それでは、また、どこかでお目にかかりましょう。