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昨年のイカ不漁の原因は、産卵場所である東シナ海の海水温が低かったためとみられていて、漁獲高は過去10年で最低の8,000トンほどでした。
今年は6月1日に解禁となったスルメイカ漁ですが、イカの街函館の6月1ヵ月間の取扱量は過去12年で最低の96トン。不漁だった前年の46%減となり、1キロ単価は5割高い750円となり、加工業者や飲食店から不安の声があがっていました。
函館駅前の朝市では、自分で釣り上げたイカを1パイ500~600円ほどで、その場で刺身にして食べることができ、観光客に大人気でした。ところが、イカそのものが少ないので、今年の7月は1パイ1,500円。価格がほぼ3倍になってしまいました。また、全国の寿司店や居酒屋などでも、イカははずせない食材で、イカ不足による価格の高騰に頭を悩ませています。
昨年のイカの不漁でイカの価格が高騰。函館では今年3月に、創業90年の老舗加工業者が倒産しました。
今年の5月の時点でもヤリイカなどが記録的不漁。塩辛などを製造する水産加工会社では、操業時間を短くしたり、商品の価格を上げたりして対応していますが、イカそのものが入ってこないので、イカの加工品をあきらめ、イカ以外の加工品の製造をはじめたところもあります。しかし、イカ以外の食品を扱ったことがない業者も多く、新しい切り口の商売に足踏みせざるをえません。
イカの不漁が続くと地元の経済に大打撃を与えます。7月には道南の水産加工業者などが水産庁に、イカの輸入枠の拡大を求めて協議しました。また、函館近郊の松前町では、イカの不漁で水産加工会社の稼働率が低下しています。このため、加工業者の従業員の雇用を維持するため、町では従業員1人あたり5万円を給付し、雇用を支援しています。
このままイカの不漁が続けば…。イカの街を観光の売り物にしている函館では、観光産業や経済活動の根本が大転換せざるを得ない状況になるかもしれません。
東シナ海で生まれたイカは夏になると、日本の太平洋側と日本海側に分かれて北上します。北海道をはじめ、青森、岩手、宮城などで獲れ、夏のはじめころから漁が本格化します。
今年のイカ不漁の原因の一つは夏のはじめの海水温の上昇。全国的に7月に猛暑が続き、函館沖の海水温が3℃上がりました。このため、イカの群れは水温の低い北の海へと北上し、函館にとどまらなかったのではとみられています。また、日本海側の対馬暖流の勢いが強かったため、イカの漁場をさらに北に押し上げたのではと指摘する関係者もいます。
北海道の日本海側のイカ漁は本来は8月ころからはじまりますが、今年は1、2ヵ月早く稚内沖にイカが北上し、稚内では19年ぶりの大豊漁に沸いています。稚内の7、8月の水揚げ量は前年の2倍近く。イカ不漁に悩む漁師が全国から集まっているため、船の燃料費や乗員の飲食費などで2億3000万円以上の経済効果が出ているようです。
一方、不漁続きに泣いていた函館ですが、一転して8月は冷夏。気温が低い日が続いたため海水温が上がらず、8月下旬から水揚げが急増しています。近年の不漁からは脱しきれていないものの、400トン近い取扱量があり、今後のイカ漁に光が射しはじめました。
〈参考:YOMIURI ONLINE 2017.05.07 「イカ不漁 加工業に打撃…道南」〉
〈参考:北海道ニュースUHB 2017.05.29 「異常イカ大不漁 創業90年老舗も倒産 2017年は大不漁ない予測? 初水揚げへ 北海道函館市」〉
〈参考:STV どさんこワイド朝 2017.07.05 「函館スルメイカ不漁」〉
〈参考:函館新聞社eHAKODATE 2017.07.09 「イカ輸入枠拡大を 水産庁と関係団体が協議」〉
〈参考:日本経済新聞Web刊 2017.07.04 「函館のスルメイカ漁、過去最低 解禁1カ月で96トン」〉
〈参考:日本経済新聞Web刊 2017.09.08 「スルメイカ不漁 雇用維持に5万円 」〉
〈参考:NHK WEB NEWS 2017.09.05 「稚内 イカ豊漁で経済効果2億超」〉
〈参考:北海道新聞 2017.07.21朝刊5面 「太平洋スルメイカ不漁」〉
〈参考:北海道新聞 2017.09.10朝刊1面 「スルメイカ北上に異変 日本海 稚内は豊漁、太平洋 道東まだ来ず」 〉
函館では早朝、朝獲れのイカを売り歩く「イガイガ~」という声が聞こえます。朝食に新鮮なイカ刺しを食べることは珍しいことではなく、ごく当たり前の家庭の風景でした。ところが、ここ数年、イカが獲れず、価格も高騰。イカ刺しはすっかり高級な一品となってしまいました。ホッケ、サンマ、サケ、そしてイカも獲れなくなってしまった北海道。食卓に並ぶ魚の種類が変わってしまい、市民も困惑しています。世界的にも海水温の極端化と偏りがみられ、本来の漁場がどんどん変化しています。日本の北の海ではいったい何が起こっているのでしょう。そして、以前のような北海道らしい魚が、安く豊富に食べることができる日がくるのでしょうか。