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6月26日は「雷の日」とされています。
その由来は、1000年以上も前のこと。930年(延長8年)に起きた平安京の清涼殿への落雷で大納言・藤原清貫(ふじわらのきよつら)が亡くなったことに端を発するとされています。
ところで「雷」といえば、「雷注意報」をどこかで見聞きしたことがあるかと思いますが、この雷注意報にはある大きな特徴があります。
それは、数ある警報・注意報のなかで最も発表回数が多いという点です。
「特別警報・警報・注意報データベース」によると、2012年12月からの統計開始以来、多い順に
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1.雷注意報
2.濃霧注意報
3.強風注意報
4.大雨注意報
5.乾燥注意報
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となっており、直近2024年の1年間の発表回数で見ても、
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雷注意報⇒約18.7万回
濃霧注意報⇒約11.1万回
強風注意報⇒約9.4万回
大雨注意報⇒約3.8万回
乾燥注意報⇒約3.9万回
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となっています。
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特別警報・警報・注意報データベース|種類別の発表回数
https://agora.ex.nii.ac.jp/cps/weather/warning/#type
さて、雷注意報はなぜ多いのでしょうか?
その理由として考えられる大きな理由として
「どの季節でも出やすい」
「どの地域にも出やすい」
というものがあります。
まずは「どの季節でも」の観点から考えてみましょう。
例えば、注意報には「大雪注意報」というものがあります。この大雪注意報は、その名の通り、大雪が予想される際に発表される注意報です。他にも「風雪注意報」や「暴風雪警報」など、雪に関連する警報・注意報はいくつかありますが、このような「雪」に関連する警報・注意報は、概ね冬、もしくは早春や晩秋に発表されることはあっても、真夏に発表されることはまずありません。
このように、警報・注意報には季節によって発表回数が大きく増減する注意報が存在します。大雪注意報のように、夏季は全く出なくなる…となると、年単位の集計では回数が少なくなりがちです。
「どの地域にも」の観点からも考えてみましょう。
同じように「雪」関連の警報・注意報は、南の地域では出にくくなるでしょう。そして、さらに地域性の強い警報・注意報があります。それが「高潮」と「波浪」です。
高潮警報・注意報、波浪警報・注意報は、どちらも海に関連する警報・注意報です。つまり、海がない内陸県には夏だろうが冬だろうが、発表されようがないのです。例えばもし、長野県に高潮警報が出る日が来るとしたら、それはもう日本沈没の日と言えるかもしれません。
このように、各種警報・注意報にはそれぞれ出にくい、もしくは全く出ない時期と場所があります。もちろん、雷注意報にも出にくい時期・場所はありますが、他の警報・注意報と比べると、その傾向は弱く、出にくい時期・場所であっても、ある程度は発表されることが回数の多さにつながっているのです。
雷注意報が多い理由として考えられるものにもう1つ、「上位の警報や、派生した注意報が存在しない」があります。
例えば、発表回数3位の「強風注意報」には、さらに上位の「暴風警報」が存在します。また、強風に加え、雪が降っている場合には「風雪注意報」もしくは「暴風雪警報」と派生した警報・注意報が代わりに発表されます。つまり、風が強すぎたり、雪が伴ったりすればするほど、その分、強風注意報は発表されなくなってしまうのです。
それに対して、雷注意報は雷がどれだけ強くなっても、「雷警報」は存在しないので出ませんし、雪や雨が伴ったからといって、「雷雪注意報」や「雷雨注意報」なども存在しないので出ることはありません。
ただ、このことは雷注意報が多くなる大きな原因とは言えないようです。というのも、暴風警報や風雪注意報、暴風雪警報は発表回数が少なく、これら3つを強風注意報に足し合わせても、雷注意報にはまだまだ遠く及ばないからです。
さて、雷注意報はいつ多いのでしょうか。
全国の月ごとの発表回数を見てみると、多いのは7・8月の夏季であることがわかります。
全国的に気温が上がり、大気の状態が不安定になりやすく、雷が発生しやすい気象条件となることが原因として挙げられます。
では、さらに地域を絞って「大阪府」の月ごとの発表回数をみていきましょう。
大阪府も、夏季に多いという全国単位での集計と同じ特徴がありますね。
では秋田県はどうでしょうか。
秋田県は、冬季にも多くなる特徴があります。また秋田県に限らず、日本海側の地域ではこのように冬にも雷注意報の発表が多くなる傾向にあります。
雷注意報の発表回数の多さの秘密には、この「日本海側の地域で冬にも回数を稼ぐことができる」ということが大きく貢献していると言えるでしょう。
では、雷注意報はどこで発表されやすいのでしょうか?
都府県別の発表回数ランキングを見てみると、1位は東京都です。2位以下は順に新潟県、秋田県、山形県、富山県となっており、日本海側に属する県が並んでいます。これは前述の通り、日本海側の地域に共通する「冬にも発表が多くなる」ことが原因と言えるでしょう。
また、少ない都道府県に注目してみると、愛知県・香川県・宮城県となっています。
ただ、発表回数最小の宮城県でも、2025年に入ってから6月1日現在までで、18回の発表がありました。これは、同じく2025年の「強風注意報」発表回数最小の奈良県(1回)、「濃霧注意報」最小の高知県(1回)、「大雨注意報」最小の香川県(0回)と比べると多い数字です。このように雷注意報は、他の警報・注意報に比べて、発表回数の少ない地域でも、ある程度の発表回数があるのです。
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※2025年6月1日現在
宮城県の「雷」注意報履歴 | ※2025年は18回の発表
https://agora.ex.nii.ac.jp/cgi-bin/cps/warning_list.pl?kcode=14&acode=040000
奈良県の「強風」注意報履歴 | ※2025年の発表はまだ1回のみ
https://agora.ex.nii.ac.jp/cgi-bin/cps/warning_list.pl?kcode=15&acode=290000
高知県の「濃霧」注意報履歴 | ※2025年の発表はまだ1回のみ
https://agora.ex.nii.ac.jp/cgi-bin/cps/warning_list.pl?kcode=20&acode=390000
香川県の「大雨」注意報履歴 | ※2025年はまだ1度も発表されていない
https://agora.ex.nii.ac.jp/cgi-bin/cps/warning_list.pl?kcode=10&acode=370000
さて、雷注意報の発表回数が多い理由の1つとして、「雷警報が存在しない」ということに言及しましたが、なぜ存在しないのでしょうか?
その理由は、雷予測の難しさにあります。
警報・注意報というのは、基本的に市区町村単位で発表されます。つまり、警報を出すには、そのレベルの細かさで強さや場所、時間の予想をする必要があるわけですが、現在の技術ではそれが難しいのです。逆に言えば、大雨や大雪などは、そのレベルでの予想が可能であるからこそ「大雨警報」や「大雪警報」を発表することができる、ということですね。
雷注意報は発表回数が最も多い注意報であり「発表の度に避難せよ」というのはなかなか難しい話かもしれません。
ただ、実際に雷が見えたり、雷鳴が聞こえたりした場合は、今自分がいる場所から避難するとしたらどこに向かうのが最適か?の心構えをしておきましょう。
また、雷注意報は「雷にだけ注意せよ」というものでもありません。
雷注意報の内容は、「落雷のほか、急な強い雨、竜巻等の突風、降ひょうといった積乱雲の発達に伴い発生する激しい気象現象による人や建物への被害が発生するおそれがある」となっていますので、これらの現象にも注意を払う必要があるのです。
いずれにせよ、雷注意報が発表されている時は、屋外での活動は避けるのが無難でしょう。
避難の心得としてはこちらの記事もご参照ください。
・雷の危険から避難するときは
https://tenki.jp/bousai/knowledge/64562a0.html
・ひょう(雹)で避難するときは
https://tenki.jp/bousai/knowledge/9d98449.html
・竜巻から避難するときは
https://tenki.jp/bousai/knowledge/663e720.html
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※出典
特別警報・警報・注意報データベース
https://agora.ex.nii.ac.jp/cps/weather/warning/