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局地的に発達した積乱雲から降る雨
「しゅう雨(驟雨)」という言葉を聞いたことはありますか?小説や映画のタイトルとして使われることも多いこの言葉ですが、「しゅう雨」とは、気象学的には対流性の雲から降る雨のことをいいます。
対流性の雲とは、鉛直方向に発達する雲のことで、具体的には”積乱雲”や”積雲”を指します。積乱雲は、強い上昇気流によって10km以上の高さにまで成長した、著しく発達した雲のことです。また積雲は、積乱雲ほどの高さではありませんが、やはり上昇気流によって上に伸びた、もくもくとした形の雲のことです。白くぽっかり浮かぶ「わた雲」であれば雨を降らせませんが、発達して積乱雲の一歩手前まで大きくなった「雄大積雲」は降水や雷を伴うことがあります。
なお”驟(しゅう)”という漢字には、「にわか、急に、突然」といった意味があります。文字通り、雨の降り出しと終わりが突然であること、降水強度の変化が一般に急激でかつ時には大きいことが、しゅう雨(驟雨)の特徴です。
しゅう雨の意味と記号
ただ、「しゅう雨」は、やや気象学や文学的な用語であるため、あまり一般的には聞きなれない言葉かもしれません。通常、テレビやWeb・ラジオなどの気象情報では、「しゅう雨」とは言わず「にわか雨」または「雨」として伝えられます。
では、この場合の「雨」や「にわか雨」の使い分けをもう少し詳しくみていきましょう。
とくに地域的に散発する一過性のしゅう雨の場合には、「にわか雨」を使います。夏の夕立やゲリラ豪雨がその代表例です。
一方、積乱雲などによるしゅう雨であっても、広域で長時間にわたる場合は「雨」とします。例えば、台風や寒冷前線に伴う雨は、あまり地域的に散発しないので「にわか雨」ではなく「雨」を使います。
また「しゅう雨」に対して、一定の強さで広範囲に長く降り続く雨を「地雨(じあめ)」と呼ぶことがあります。主に乱層雲などの層状の雲から、しとしとと降る雨です。
対流性の雲である積乱雲や発達した積雲は、乱層雲のような層状の雲と比べて、短い間にまとまった雨を降らせます。
ときには数十分という短い時間で数十ミリの雨が降るような、ゲリラ豪雨(局地的な大雨)をもたらすことがあります。
短時間に大量の雨が降ると、中小河川の急な増水や氾濫、低地やアンダーパスの冠水、地下街の浸水などの水害が起こるおそれがあります。
また、河川の上流でゲリラ豪雨があった場合、自分がいる地域で雨が降っていなくても、川の水位が急激に上昇することがあるので、河原付近にいる場合には注意が必要です。
さらに発達した積乱雲は、雷や竜巻やダウンバーストなどの突風、ひょうなどの激しい気象現象を伴うこともあります。
このため、天気予報では「にわか雨」といった言葉に加えて、「急な強い雨や落雷、突風などに注意を」という言葉もセットで伝えることがほとんどです。
もし「急に真っ黒な雲が近づいてくる」「雷鳴が聞こえる」「稲光が見える」といった天候の急変に気づいたら、急な強い雨などに注意をし、危険な場所からは離れてください。
発達した積乱雲がもたらす現象