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日本およびその周辺で人間の身体に感じる地震(震度1以上の有感地震)は、1年間に1,000~2,000回ほど起きています。
一方、フランスでは約30回程度とその差は歴然。ゼロではありませんが、非常に少ないです。
下記の地図は1962〜2021年にフランスで起きた地震の位置をまとめたものです。 [※1]
円は地震の震源地を表し、それらの直径はマグニチュードに比例しています。
この地図を見ると分かるように、日本では全国的に地震が起きているのに対し、フランスでは一部の地域に集中して起きています。
フランス南東部のアルプス山脈や南部のピレネー山脈などの山岳地帯では、地震活動が比較的活発なのが分かります。
一方、北フランスや中央部など地震活動が少ない地域では、有感地震の発生は非常に稀です。
また、この地図のとおりすべての地震はマグニチュード6以下で、そのうち95%はマグニチュード3.5未満と日常生活に大きな影響を与えることはほとんどありません。
これらの記録や研究により、地震の発生するリスクの高さを5段階に分け、地域別に色分けした地図も公表されています。[※2]
リスクの高いレベル5はどれも海外県ですが、フランス本土では、アルプス山脈やピレネー山脈付近に見られるレベル4が最も高いですね。
これらの地域では、建物の耐震性を確保するため、設置場所や建築デザインの選択、耐震構造規則の遵守、適切なメンテナンス、などの耐震対策が講じられています。
<出典>
[※1] BCSF RENASS
https://renass.unistra.fr/fr/produits/sismicite-instrumentale-de-la-france-hexagonale/
[※2] ecologie.gouv.fr
https://www.ecologie.gouv.fr/tremblements-terre-et-seismes-en-france
ではなぜ、フランスでは地震が少ないのでしょうか。
地震は主に地球のプレート境界で発生することが多いです。
日本は太平洋プレート、フィリピン海プレート、北アメリカプレート、ユーラシアプレートの4つのプレートが接する位置にあり、地殻変動が活発なため地震が発生しやすいです。
一方、フランスはユーラシアプレートの内部に位置し、主なプレート境界から距離があるため地盤が安定しています。このため、プレートの衝突やズレから起こる地震活動が少ないのです。
フランス中央地震局(BCSF)の地震学者によると、マグニチュード5以上の地震は3、4年に1回、マグニチュード3の地震は月に1回程度だそうです[※3]。
実際に、2000年以降に起きた地震のうち、比較的マグニチュードが大きかったのは次のとおりです。
2023年 フランス西部 M5.8
2019年 フランス南部 M5.4
2003年 フランス北東部 M5.4
日本と比べると頻度はかなり少ないですが、2023年6月16日にフランス西部で起きた地震では、家屋の壁にひびが入ったり、屋根瓦が落ちるなど、多くの建物が被害に遭われたそうです。
<出典>
[※3] BFMTV
https://www.bfmtv.com/societe/plus-de-4000-seismes-enregistres-chaque-annee-en-france-metropolitaine_AN-201903200104.html
日本ではマグニチュード7以上の大規模地震が度々発生しています。
ヨーロッパでも過去には、ポルトガルのリスボン地震(1755年)、イタリアのメッシーナ地震(1908年)といった大規模地震が記録されていますが、その頻度は極端に少なく、大きな地震といえばマグニチュード5〜6程度の中規模地震です。
ヨーロッパの中でも特に地震が少ない地域は、北ヨーロッパや西ヨーロッパです。
一方、南ヨーロッパや東ヨーロッパの一部の地域、イタリア、ギリシャ、トルコ西部などは、比較的地震が多い地域として挙げられます。
これらの地域は、ユーラシアプレート、アフリカプレート、アナトリアプレートなどのプレートの境界やその近くに位置しているため、地殻変動が活発なため地震が発生しやすいのです。
ヨーロッパの地震に関するニュースなどで、建物の被害のひどさに驚かれたことはないでしょうか。
地震に慣れている日本人からすると、それほど大きいとは思えない地震であっても、建物の倒壊や損壊が目立つことがあります。それには以下の要因が考えられます。
1. 耐震基準の違い
日本は地震が多発するため、建物の耐震設計や建築基準が非常に厳しいです。
建物は地震の揺れに耐えられるように設計され、最新の技術を導入することで、地震の被害が最小限に抑えられています。
一方、日本に比べて地震が少ないヨーロッパでは、地震によって建物が倒壊した経験がほとんどないため、建物の耐震設計があまり進んでいません。そのため、小さな地震でも被害を受ける可能性が高いです。
2. 建物の老朽化
日本では新築を好む方も多く、建物の建て替えが盛んに行われています。古い建物も定期的な点検や、耐震基準に合わせた改修が進んでいます。
一方ヨーロッパでは、古い建物を手を加えながら残していくのが一般的です。地震が少ないことからも、古い建物を維持し続けることができ、歴史的建造物も多いです。これらの建物は地震に対しては非常に弱いとされていますが、その保存が優先されるため、耐震補強も十分でないケースが多いです。
3. 地震に対する意識と教育
日本では地震に対する意識が高く、学校や職場でも定期的に防災訓練が行われているため、緊急時の対応が迅速です。
一方ヨーロッパの多くの地域では、大人も地震の経験がないため意識が低く、防災訓練や教育があまり行われていません。
私の娘が通うフランスの小学校でも、火災や不審者に対する避難訓練は行われていますが、地震に対する教育はゼロ。フランス人に「日本の学校では地震に備えた訓練をする」と話すと驚かれます。
そのため、実際に地震が発生した際に対応が遅れてしまう可能性もあります。
フランスを含むヨーロッパでは、地震は稀に起こる災害であり、対策があまり進んでいないのが現実です。
しかし、過去には大規模地震による深刻な被害を受けています。また、小規模や中規模の地震であっても被害を伴うことがあります。
地震は予測が難しい災害です。起こりうる可能性が低いとしても、十分な対策や備えが大切ですね。
ヨーロッパでも、地震に対する意識の向上と耐震対策がより一層進むことを期待したいです。