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今シーズンは、記録的な高温によって、5月を待たずに新緑が心地よい季節が到来しています。
よく森林浴がもたらす効果の説明の一つとして「フィトンチッド」という言葉を聞くことがあると思います。この「フィトンチッド」とは、樹木が自分の身を守るために葉や幹から放出している揮発性物質のことです。
樹木は自由に動き回ることができないため、害虫などに傷つけられると、そこでフィトンチッドを放出します。
フィトンチッドには害虫を寄せつけない効果があり、発散することで、自分の身を守ります。葉を枯らしたり、幹を痛める樹病菌(じゅびょうきん)まで殺す力を持つものもあるそうです。
この効果を活かし、除草剤や虫よけ、殺虫剤などが作られたり、人間の病気の治療や健康に役立てられるなど、フィトンチッドは生活の様々な場面で活用されています。また、癒しの効果があるとされる森林浴では、フィトンチッドの正体のテルペンによって、気を静める働きがあるとのことです。
フィトンチッドには、殺菌・抗菌作用があることが、これまでの研究により実証されていて、食生活の中でも様々な場面で活用されています。
例えば、お寿司屋さんなどでは、寿司のネタとなるお刺身の入ったガラスケースには、ヒノキなどの針葉樹の葉が入っていたり、お寿司のネタの間には、シソの葉が使われていることがあります。これらは、植物の殺菌作用を利用して、お寿司の鮮度を保ってます。
また、柿の葉寿司や鱒寿司などの押し寿司は葉っぱで包まれていますが、これは、菌の繁殖を防ぐためです。
他にも、桜餅や柏餅なども、葉にお餅が包まれています。これも見た目が美しくなるだけでなく、フィトンチッドの抗菌作用が利用されています。
フィトンチッドは、植物が外敵から自らの身を守るために作り出す物質で、殺菌・防腐効果だけでなく、消臭や脱臭効果も併せ持ち、空気そのものを浄化する力があるといわれています。
様々な生き物が暮らす森の中にいても、不快な臭気を感じることなくリフレッシュできるのは、まさにフィトンチッドの浄化による効果のおかげともいえるでしょう。
また、フィトンチッドは樹木が伐採されて、木材になっても効果が持続するといわれています。この消臭や脱臭効果から、消臭スプレーや空気清浄機などに使用されています。
森林は、安らぎや癒しの効果をもつ空間であり、フィトンチッドと呼ばれる樹木からの揮発性物質を含めて、健康増進効果があると言われています。フィトンチッドは植物の種類などによって放出量が変わりますが、新緑が美しい今の時期は特に大きな効果をもたらしてくれそうです。
森林に触れて心身を癒やすことを「森林浴」といいます。
ストレスを感じると分泌されるホルモンが、森林浴をすると減少するという研究結果もあり、ストレスの軽減にも効果的です。
実際に、ストレス状態にあるサラリーマンを対象に3日間の森林浴を行った際に、ヒトNK(ナチュラルキラー)細胞が放出する3種類の抗がんタンパク質がいずれも増加することを明らかにした実験結果が発表されていて、疲労度の高い方ほど、森林浴は欠かせないと言っても過言ではなさそうです。
疲れを感じた時や、気分転換をしたい時など、ぜひ森の中を歩いたり、座ったり、寝てみたり、思い思いの楽しみ方で過ごしてみてはいかがでしょうか。
参考資料:林野庁