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食料の確保が大切なことは今も昔もかわりません。冷蔵庫があり農産物の流通が頻繁かつスムーズに行われている現代では、あまり気にかける必要もなくなってきました。それでも昆布や干し椎茸、高野豆腐などの乾物類が今でも人気なのは、食品としての価値の高さを誰もが認めているからでしょう。
〈大根引く岬の灯台点るまで〉 赤松徳二
青々と葉をのばした大根がいっぱいに広がった畑、1本1本抜いていく作業はなみたいていのことではないでしょう。大地から青空へ! ずらりと並んで干されている真っ白い大根の清々しさは、今年の恵みの豊かさと同時に食への安心を感じさせます。干された後はどのように加工されていくのか、想像するだけでも楽しみです。
〈一山を賄う大根勧進す〉 中嶋齊公
沢庵に奈良漬け、はりはり漬け、いぶりがっこ、味噌漬け等、大根を材料にした漬け物は、地元の材料や気候を生かして数多く作られています。鉢に盛られた姿は食卓ではおなじみです。一年を通じて食卓にホッとするひとときを作ってくれる存在です。
〈煮ふくめし大根に箸の穴二つ〉 山本美紗
品種も多く調理法も多彩とあって冬には特に人気の野菜です。家庭でも切ったり、おろしたり、煮たりと大活躍の大根。1本を使い切れないと思った時は、ぜひ薄く切ったり、細く切ったりして干してみてください。水分が抜けるとまた違う食感と味わいが楽しめることでしょう。
私たちの「冬支度」といえば、あったかなセーターやオーバーコートを出してくることでしょうか。野外で冬を越す樹木も品種によっては冬を越すための保護が必要な場合があります。それが「藁囲」です。
〈着せ藁や顔をのぞかせて寒牡丹〉 保坂加津夫
〈寒牡丹濁世隔つる菰の内〉 森川明
藁で囲われなにかホッとしているような牡丹の息が聞こえてきそうです。稲刈りが終わり脱穀したあとの「藁」は、冬を迎えるための藁沓(わらぐつ)や、生活に必要な縄や筵などを作り出すための大切な材料となりました。
今でもお正月を迎える縁起ものには必ずといっていいほど「藁」が使われています。新年になると門口に張る注連縄(しめなわ)は災いが入らないようにとの意味をもっています。数年毎に架け換え、奉納される出雲大社の太く大きな注連縄(しめなわ)も大量の藁を用いて人々の手で作られています。収穫された稲を神様に供えるのと同じくらい、大切な心が込められていることがわかります。
中が空洞の藁は空気を含み保温性と湿気を調節する役目があるといわれます。稲の持つ神聖さとともに「藁」で囲われた花や樹木は、安心して寒い冬を乗り越えられますね。
あなたのベランダの鉢植えはいかがですか? 寒さに弱い樹木や花がありましたら、寒い夜はカバーを掛けたり屋内に入れるなど、ちょっとした心遣いで次の季節も元気に過ごせるようですよ。
今のように便利な世の中ではなかった時、人々は寒さ厳しい季節をのりこえ新しい春を迎えるために、多くの準備を必要としてきました。当時ほどではありませんが、冬に向けての準備は今でも変わりません。12月に入ると寒さもしだいに本格的になっていきます。「我が家の冬支度」について夕食後のひとときにでもふり返っておくのはいかがですか。
〈この冬をここに越すべき冬支度〉 富安風生
気温が下がる前のお天気のいい日を選んで計画を立てて実行しましょう。長くしまっておいたストーブなどの暖房器具は、正しく動くかきちんと確認しておくことも大切です。大好きだったセーターやオーバーコートも出してみたら、何となく古びてしまっていてどうも袖を通す気にならない、ということもあるかもしれません。セールやお買い物チャンスも忘れずにチェックしておいた方がよさそうです。
冬支度とともにやっておきたいのが片付けと掃除。ポイントは欲張らないことだそうです。始めるとつい目につくこともあるでしょう、決めた場所を決めたように終えて達成感を味わうのも大切だとのこと。ミカンやお餅など年末に向かって送られてくるものも増えてきます。生活のじゃまにならない荷物の置き場の確保も大切ですね。
〈歌ばかり歌つてゐたる冬用意〉 横山悠子
とっておきの秘訣は楽しくやること。大好きな音楽をかけたり鼻歌を歌いながらできれば、アイディアも湧いて楽しい時間になっていくことでしょう。「冬支度、これでいいかな」そう思えれば、あとはゆっくりと年末年始の支度を進めてまいりましょう。気持ち良く年を越す心がまえが新しい年の幸せの原点になりそうです。