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これまで、ランニング中の熱中症対策としては、「水分と塩分をしっかり補給しよう」ということが言われてきました。ただしそれだけでは間に合わず、気温が30℃を超えるような日にはしっかりと水分と塩分を補給しても、脱水状態になってしまうことがあります。
もちろん、そういう環境を避けて午前中の涼しい時間や、日が沈んでから走るのが理想です。とはいえ、すべての人ができるわけではありませんし、何よりも熱中症は日中だけ気をつければいいというものでもありません。
このため、熱中症対策としては、夏場はランニングをお休みにするか30分程度のジョギングを早朝にするのがおすすめです。ただし、秋のマラソン大会に間に合わせようとすると、やはりしっかり距離を積む必要があります。
ではどうすればいいのかという話ですが、いま注目されているのが「手を冷やす」という熱中症対策です。2021年の夏に開催された競歩のレースでは、日本の選手が手に保冷剤を持って歩くなど、すでにトップアスリートが実践している方法で、専用のアイテムも販売されています。
なぜ熱中症対策として、手を冷やすことが有効なのか気になりますよね。少し専門的な話になるので、細かい部分の説明は省きますが、これは私たちの手のひらにあるAVA(Arteriovenous anastomoses)血管が影響しています。
AVA血管は体温調整をするための血管で、手のひら以外に足裏や顔などにあります。手のひらを冷やすとAVA血管を流れる血液が冷やされ、その血液が体を巡ることで体内を冷やして回り、結果的に深部体温が下がって発汗量を抑えられるというわけです。
ポイントはランニング前から冷やしておくこと。ランニングに出かける10分前くらいから手を冷やして、ランニング中も冷やし続けましょう。注意してもらいたいのは、保冷剤を直接手で持たないということ。
冷やしすぎると血管が収縮するので、血液のめぐりが悪くなって逆効果。理想の冷却温度は12〜15℃で、保冷剤は0℃以下になるので冷やしすぎです。保冷剤をタオルなどに包み、必要に応じて握るか、手を冷やすためのアイテムが販売されていますので、それらを活用しましょう。
手のひらを冷やせば、夏の暑さをそれほど感じることなく走れますが、ただ万能な熱中症対策というわけではありません。快適に走れるからといって、負荷を上げてしまうと深部体温が上がってしまって、熱中症になる可能性もあります。
1.午前中の涼しい時間に走る
2.ビルの陰など直射日光を避けて走る
3.ランニング用の機能性ウェアを着る
4.こまめに水分・塩分補給する
気温が高い日は手のひらを冷やすだけでなく、これらの熱中症対策と組み合わせるようにしましょう。どれくらいを気温が高いとするかは個人差やトレーニングメニュー、湿度なども関係してくるので一概に言えませんが、目安としては28℃程度(暑さ指数:25〜28)で要警戒となります。
早朝に直射日光を避けながら走ること。そのときに機能性ウェアを選び、こまめに水分と塩分を補給したうえで、手のひらを冷やせば、熱中症リスクは下がります。それでも100%安全というわけではないので、異変を感じたらすぐにストップしてください。
暑さ指数とは?|環境省
ランニングで大切なのは、「トレーニング・食事・睡眠」のバランスで、トレーニングだけでなく食事も睡眠も大切です。夏になると暑さから眠りの質が下がってしまうという人もいるかと思いますが、その場合も就寝前に手のひらを冷やすのが効果的です。
睡眠の質は深部体温と深い関係にあり、就寝前に深部体温を下げることで、入眠しやすいことがわかっています。睡眠の質が上がればしっかりとリカバリーできるため、トレーニングの頻度を上げられるといったメリットもあります。
手のひらを冷やすだけでなく、就寝の1時間〜1時間半前に湯船に浸かって、深部体温を高めておくのも有効です。もちろん就寝前にスマホやパソコンの画面を見ないなど、こちらも他の方法と組み合わせて、より高い効果を得るようにしてください。
ただし効果をどれくらい感じられるかは個人差がありますので、まずは冷やしたペットボトルドリンクや、タオルなどに包んだ保冷剤などで試してみるのがいいかもしれません。効果を感じたら、使い勝手のいい専用アイテムを利用してみましょう。