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現在造られているビールは、発酵タイプにより主に「エール」と「ラガー」の2種類に分けられます。さらに細かく分類したビールの種類のことを「ビア(ビール)スタイル」といい、原材料の違いや使用する酵母、発祥地などによって100以上のタイプに分類されています。
古くから伝わる製法は、エール酵母を用いる「上面発酵」。15〜20℃のやや高温で発酵し、酵母が麦汁の表面に浮き上がってきます。発酵期間は3〜4日、その後は約2週間熟成させます。一方、中世以降にはじまった製法で現在主流となっているのが、ラガー酵母による「下面発酵」。5℃前後の低温で発酵し、酵母がタンクの底に沈んでいきます。発酵期間は7〜10日で、約1か月間ゆっくり熟成させます。
エール酵母から造られるビールは豊かな香りと深い味わいの「エール」、ラガー酵母からはすっきりとしたキレのある「ラガー」がうまれます。下面発酵は低温で発酵するため、雑菌が繁殖しにくく管理しやすいというメリットがあります。一定の品質を保ったビールを大量に生産するのに向いていることから、ラガーは世界中で普及しました。現在、日本で流通している大手メーカーのビールもほとんどがラガーの「ピルスナー」というスタイル。世界中で最も普及し愛飲されているのが「ピルスナー」なのです。
定番のピルスナーをはじめ、100種類以上あるビアスタイル。そのなかから、ぜひ知っておきたい10種の代表的なスタイルをご紹介します。
【1】ピルスナー(Pilsner)/ラガー
19世紀半ばにチェコのピルゼンで誕生。淡色ですっきりしたキレとホップの爽やかな香りが特徴です。世界で最も普及しているビアスタイルで、日本でも親しまれている味わい。
【2】ペールエール(Pale Ale)/エール
16世紀頃にイギリスで発祥した代表的なエール。かつてのビールは色の濃いものが多く、それらよりも色が淡かったことから「ペール(色が淡い)エール」と呼ばれるようになりました。芳醇な香りと味わい深く引き締まった苦みが持ち味。
【3】アンバーエール(Amber Ale)/エール
アメリカ西海岸発祥のエール系ビール。ペールエールよりも焙煎された麦芽を使用するため、琥珀色や褐色の色合い。カラメルやトーストのようなモルトの香りとホップの苦みが特徴です。
【4】IPA(India Pale Ale)/エール
ホップの香りや苦みが強く、アルコール度数も高め。大航海時代、植民地だったインドに船でエールを運ぶため、保存性を高めるホップを大量に加え、アルコール度数も高めたことから誕生しました。アメリカのクラフトビールで注目され、人気を集めています。
【5】スタウト(Stout)/エール
「Stout」は「強い」という意味があり、ローストした大麦の香ばしさと苦味が特徴。クリーミーな泡とまろやかで芳醇なコクをもつ黒ビール。アイルランドのビール醸造会社ギネス創業者、アーサー・ギネス氏により、ロンドンが発祥のポーターを改良して造られました。
【6】ヴァイツェン(Weizen)/エール
小麦麦芽を最低50%以上使用したドイツの伝統的なビール。フルーティーで爽やかな酸味があります。クリーミーな泡と甘い香りは、ビールが苦手な人にもおすすめ。
【7】ベルジャンホワイト(Belgian White)/エール
ベルギーのヒューガルデン村が発祥。小麦を使用し、副原料として加えるコリアンダーシードやオレンジピールが特徴。爽やかな風味が人気で、日本やアメリカでも造られています。
【8】バーレイワイン(Barley Wine)/エール
原料にバーレー(大麦)を使用し、半年から数年かけて作られる長期熟成により、ワインに近いアルコール度数に。フルーティーな香りと熟成香を楽しみたいビールです。
【9】フルーツエール(Fruit Ale)/エール
醸造の途中でフルーツやフルーツシロップが投入されるため、フルーツの香りが特徴的な仕上がりになっています。ベルギーでは伝統的に造られてきたスタイルで、日本でもご当地特産のフルーツを使用して造られることが多いスタイルです。
【10】サワーエール(Sour Ale)/エール
ビール酵母よるアルコール発酵と乳酸菌による乳酸菌発酵を同時に行うため、酸味のある味わいが特徴です。フルーツを加えて発酵・熟成したり、フルーツシロップを入れる場合も。ベルギーの『ランビック』など、野生発酵で作られるビールもこのスタイルに含まれます。
基本となる原料「麦芽・ホップ・酵母・水」からうまれる、個性豊かで多彩な味わい。今年の夏は、好みのスタイルをみつけてビールの世界を楽しんでみませんか。
・参考文献
『厳選世界のビール手帖』世界文化社
・参考サイト
ビール酒造組合