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気づけば秋も終わりに近づき、冬の到来を告げる季節のたよりが聞こえてきます。あの暑かった夏はいつのこと? と暑さを懐かしく思い出して可笑しく感じることはありませんか。初秋、秋が立つと風が涼しく感じられホッとひと息。やがて涼しく感じた空気が冷えて白く露を結び、ほどなく寒露にそして霜となります。湿潤な日本の気候は大気中の水蒸気の穏やかな温度変化で進んでいくことがわかります。私たちにとっては、あれっ!いつの間に? という気持ちになるのも、もっともなことです。日本人の穏やかな民族性もこのような季節の変わり方と関連があるのかもしれません。
「おもひなし木の葉ちる夜や星の数」 水間沾徳
木の葉の舞落ちる日は気のせいか夜空の星も多いような気がします。晩秋を過ごす俳人のなんとものんびりとしたおおらかさを感じ、ゆったりとした心持ちになれる句です。
寒さにむかい縮こまってしまいがちな身体ですが、心がゆったりとできる何かを見つければ、また楽しさにつながりそうです。
寒さ増す霜月ゆえに嬉しいのは、スッキリと晴れた青空から注ぐ暖かな太陽の光に包まれることではないでしょうか。こんな日は「小春」や「小春日和」とよばれます。小さな春になんとも言えぬホッとする暖かみを感じます。
ほのほのと暖かい「小春日和」になってほしい、と切に願うのが「七五三」のお詣りではないでしょうか。医療が十分に発達していなかった時代に、子どもが無事に成長していくことは祈りに近かったのでしょう。
三歳で髪を切ってのばし始める髪置(かみおき)、初めて男の子が袴を着ける五歳の袴着(はかまぎ)、そして女の子は帯を使い始める七歳の帯解(おびとき)と、成長の節目を古くから祝ってきました。
医療が発達した現代でも「子どもは天からの授かり物」という気持ちは変わりません。健やかな成長を「千歳」にと願いを託していきたいです。
「霜月」は「小春日和」もあれば、また「時雨月」(旧暦10月)ともいわれるほど良く雨が降ります。
石蕗(つわぶき)は真っ直ぐに茎を伸ばし凛と立ち、黄色い花は冷たい雨に打たれながらも鮮やかさを保ちます。蕗に似た丸い葉が持つ艶は寒い季節に活き活きとしたエネルギーを発散しているように感じます。門先や玄関先、庭石や手水鉢のかたわらが似合うのは、ひとつの世界を作り出す力を石蕗が持っているからかもしれません。
「さびしさの眼の行く方や石蕗の花」 大島蓼太
俳人の目を捉えた石蕗の花のはなやかな色が、さびしさと対比されて浮かんできます。枯れながら色をなす紅葉、寒さの中にも瑞々しさをもって咲く花、それぞれの時を経て晩秋から初冬へ、季節は明るさの裏に寂寥感を宿しながら進み「小雪」となり「霜月」も終わりをむかえます。
さあ、いよいよ寒さと向き合う季節の到来です。晩秋の名残を楽しみつつ冬支度へと進んでまいりましょう。