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ハブは日本列島に生息しているマムシの仲間で、クサリヘビ科に属します。日本の固有種でもあり漢字では「波布」と書きます。沖縄本島などにいるハブは別名「ホンハブ」と呼ばれ、成長すると全長2mを超えるほど大きく成長することもあり、毒性が強いこともあって特に注意が必要な種です。
また、ホンハブ以外にもトカラハブ、ヒメハブ、サキシマハブ、タイワンハブといった種がいます。トカラハブはトカラ列島の中でも宝島と小宝島にのみ生息し、ヒメハブは沖縄諸島と奄美群島のみに生息。どちらも比較的毒性が弱いのが特徴です。また、サキシマハブは八重山列島固有のハブで、タイワンハブは台湾原産でサキシマハブに似ています。両種とも本来は沖縄本島にいませんでしたが、人の手によって持ち込まれ、現在では沖縄本島でも野生化しています。
ハブは他の多くのヘビと同じく夜行性で、日中、陽が射しているところには滅多に出てきません。なので旅行者が普通に街中を観光するだけなら特に注意しなくても大丈夫。ただ、草むらや林の中など日当たりが悪い所には昼間でも出没することがあるので、サトウキビ畑などの茂みに入る際は注意が必要です。事実、沖縄県民が日中にハブに咬まれることが多いのは農作業中となっています。ちなみに、気候が温暖な琉球列島ではヘビは冬眠しないので、冬でも草むらなどに入る際は注意が必要です。
ハブは辺りが薄暗くなってくると活動を開始し、湿度が高く暖かい夜には特に活動的になります。そしてネズミ(ドブネズミやクマネズミなど)やカエルを好んで捕食し、稀にウサギやネコなどの哺乳類や鳥類も捕食します。獲物に対しては体をしならせてから頭部を突き出して咬みつきますが、ジャンプをすることはできません。したがって、ハブに対して約1.5m以上の距離をとれば攻撃は届かないとされています。ハブを見つけたらとにかく2m以上離れるのが鉄則です。
ハブの毒は筋肉や血管をこわす恐ろしい力を持っており、放置すると循環機能の圧迫による患部の壊死や機能障害を引き起こします。また、毒が回ることで嘔吐や腹痛、下痢、血圧低下、意識障害など様々な症状が起こります。一定の時間内に血清を打たなければ死に至ることもあり、重症化してしまうと1カ月ほど入院する羽目にもなりかねません。生まれたばかりの子ハブであっても毒を持っているので、どんな状況でもハブに近づくのは危険なのです。
こうしたハブ毒の被害に古くから悩まされてきた沖縄県では、数十年かけてハブ対策を進めてきました。ハブ毒の血清を県内の医療機関に常備させているほか、ハブに咬まれた際の対応法などを子供の頃から教育しています。その結果、沖縄県では2011年~2020年の10年間でハブ毒による死者を0に抑えています。また、ピーク時には年間300~500名程がハブに咬まれていましたが、ここ10年間は毎年70名前後の被害で推移しており、咬まれること自体が少なくなっています。
エサであるネズミを追って民家に侵入することもあるハブ。家で昼寝をしていた人が咬まれたという事例もあり、どれだけ注意していても咬まれてしまうこともあるようです。咬まれてしまった場合、正しい対処法を知っているかどうかで予後が決まるので、以下の基本行動を覚えておくと良いでしょう。
1.咬まれたらまずは慌てずに、ハブかどうかを確かめます。ハブと無毒のヘビを見分ける方法として手っ取り早いのが、頭部のうろこの形状確認。ハブの仲間の頭は細かいたくさんのウロコで覆われており、無毒のヘビは大きなウロコでおおわれています。また、ヘビの種類が分からなくても、ハブであれば咬まれた牙の跡が2本あり、数分で患部が腫れてものすごく痛みます。
※牙の跡が1本あるいは3~4本の時もあります
2.ハブに咬まれたら大声で助けを呼び、すぐに医療機関を受診します。パニックになって走って病院に行こうとすると毒の回りが早くなるので、可能であれば誰かに車で運んでもらいましょう。周囲に人がいない場合は心拍数が上がらないよう、ゆっくり歩いて向かうようにします。
3.病院まで時間がかかる場合は包帯やネクタイなど、帯状の幅の広い布で指が1本通る程度にゆるく縛ります。血の流れを減らしつつ、15分に1回はゆるめるようにしましょう。恐怖心から細いヒモなどで強く縛るのはNG。血流が止まってしまうので逆効果になります。
上記の3点を知っておけば、重篤化や後遺症が残ることも少なくなるとされています。
沖縄地方を含む亜熱帯には約30種のヘビが生息していますが、全てのヘビがハブのように毒を持っているわけではありません。アカマタやリュウキュウアオヘビなど半分以上が無毒のヘビであり、どれも貴重な固有種です。SDGsが叫ばれる昨今、猛毒を持つハブであっても、自然環境や生態系を維持するためには必要な存在です。皆で正しい知識を身につけることで、人間と動物が良い距離感で共存していける環境作りができたら良いですね。