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アジサイと聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、下のイラストにあるようなこんもりとしたアジサイや、ガクアジサイだと思います。あの、水色や紫、ピンクなどの部分、美しいですよね。自然に考えれば、あれが花だと思いますよね?
ところが、花ではないのです!!!
花のように見える部分が、花ではないといわれると、びっくりしてしまいますよね。
実は、花のように見える部分は、「装飾花」といい、ガクが変化したものなんです。ガクだと知って、なんだかガクっと来た方もいらっしゃるかもしれませんね。
各地の気象台では、アジサイの開花日を観測していますが、気象台で観測しているのも、装飾花ではありません。
では、花は一体どこにあるのでしょうか。
ガクアジサイの場合は、真ん中の部分に花があります。ちなみに、ガクアジサイの「ガク」は、ガクからきているのかと思いきや、額縁のガクだそうです。花だと思った部分が「ガク」だったり、額縁の「ガク」だったり…。つれないヤツですね。
一方、こんもりとしたアジサイの花はどこにあるのでしょうか。装飾花をわけると…奥に隠れています。随分と奥ゆかしいですね。さすが日本原産。大和なでしこ!(ナデシコではなく、アジサイですけど)
この花は、装飾花に対して「真花(しんか)、真の花(しんのはな)」といいます。
気象台での観測では、標本木という決められたアジサイで、この真の花が2~3輪咲いた最初の日をアジサイの開花日としています。
ところで、このアジサイ。装飾花の色は変わるということを聞いたことは、ありませんか?例えば、土が酸性だとアジサイの青が濃くなる…アルカリ性なら赤…など。筆者は、小学3年生の頃に知り、密かに研究していました。
名付けて「ドキドキ!土のpH(ペーハー)でアジサイの色は変わるかな」実験!
まず、自宅にもともとある青いアジサイの横に、違う色のアジサイを植えたらどうだろう?と思い、庭にピンクのアジサイがあるお宅にお邪魔し、いきなりピンポンを押して、挿し木をできるように枝をもらって青の隣に植えてみました。自宅のアジサイは青なので、酸性。酸性の地面にピンクを植えたら、ピンクも青に変わるのではないか?と考えたのです。
季節は巡って、またアジサイのシーズンになりました。アジサイは、最初は白っぽい色をしていますが、だんだんと色がはっきりしてきます。もともとあった青いアジサイも、もらってきたピンクのアジサイも、初めは白っぽい色をしていました。さあ、ピンクのアジサイは、青に変わるのか?
結果は、期待とは裏腹に、ピンクはピンクのままでした。ピンクの隣の青も変化はありません。当時小学生だった私は「ははーん。これはピンクだと色が濃すぎて変化がわからないのかな?」と思いました。そこで、次は庭に白いアジサイがあるお宅にお邪魔して、挿し木用に枝をもらってきました。白いアジサイを選んだ理由は、白なら色が変わったことがわかりやすいと思ったからです。白いアジサイは、青の隣、ピンクと反対側に植えました。またまた季節は巡り、アジサイのシーズンがやってきました。さあ、白いアジサイは青になるのか?すると…白は白のままでした。
そんなわけで、家の庭には、青を中心に右にピンク、左に白が咲きました。
広い土地ならともかく、ネコの額ほどの狭い庭の範囲で土がアルカリ性・酸性など細かく分かれているとは思えないので、アジサイの色が変わるというのは、都市伝説だったのでしょうか…。
日本気象協会の中には、かわいらしいピンクのアジサイを、実家の庭に植えてルンルン気分で待っていたら、翌年ピンクが青に変わってしまったという人もいました。これはどういうことなのでしょう!?
調べてみると、アジサイには色が変わる品種と変わらない品種があるようです。
私たちが普段訪れるアジサイの名所でも、同じ色のアジサイばかりではなく、様々な色のアジサイが隣り合っていますよね。
また、アジサイの装飾花は、最初のうちは、葉緑素があるから薄い黄緑色を帯びていて、葉緑素が分解されていくとともに、青のもとであるアントシアニンや赤のもとになる色素ができるそうです。
みなさんも、アジサイを見つけたら、真の花を探してみてくださいね。
そして、もし、ご自宅のアジサイが色の変わる品種だった場合、酸性の肥料を与えると青になるそうです。酸性の肥料なんて手元にないという場合は、ミョウバンでもいいそうです。ミョウバンは、ナスの漬物を鮮やかにするために使われています。買ってきたナスの漬物の材料を見るとほとんどのものに「ミョウバン」と書かれています。そして、ミョウバンは、スーパーの漬物作り用品のコーナーにも売っています。
うまくいけば、色の変化を楽しむことができるかもしれませんよ。
参考文献:『アジサイはなぜ七色に変わるのか?―花の色の不思議を科学する』東京学芸大学教授・理学博士 武田幸作(PHP研究所)