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ラン科のアツモリソウは様々な種類があり、その多くが褐色の花をつけますが、礼文島にだけ咲く「レブンアツモリソウ」は、褐色ではなく、直径 5~7cmほどの淡いクリーム色の花をつけます。
礼文島は、日本最北端の離島。稚内市の西側60kmに位置します。利尻礼文サロベツ国立公園に含まれ、300種類もの高山植物が咲くため、“花の浮島”ともよばれています。レブンアツモリソウは、この礼文島だけに自生し、その希少性と優しく美しい姿から、人気の高い野生のランです。
以前は6月上旬ころに咲きはじめていましたが、最近は5月下旬から見ごろをむかえることが多くなりました。礼文島に桜前線が届くのは、早いときで5月上旬。ちょうど桜が終わるころにレブンアツモリソウが咲き出し、6月下旬まで、かわいらしい姿で私たちを楽しませてくれます。
ひと昔前までは、礼文島のあちこちで咲き乱れていたレブンアツモリソウですが、80年代になると多くの盗掘にあい、また、生育環境の悪化により、その数が激減してしまいました。
平成6年(1994年)に、絶滅の恐れがある“国内希少野生動植物種”に指定され、平成8年(1996年)には農林水産省と環境省が保護増殖事業計画を共同策定しました。これにより、柵を設け巡視を行って保護・管理が強化されることになり、盗掘は激減しました。
2000年には開花個体数が250未満にまで落ち込み、今では、北鉄府地区の保護林「レブンアツモリソウ群生地」以外ではほとんど見られなくなってしまいましたが、平成28年(2016年)には、北海道地方環境事務所、北海道森林管理局、礼文町の三者が協力し、レブンアツモリソウが自然の状態で安定して生育できるような環境を整え、個体数の減少を食い止めようと尽力しています。
自生するレブンアツモリソウを保護する一方で、礼文町では昭和61年(1986年)、人工的な増殖を進めるため、「高山植物培養センター」を設置し、平成4年(1992年)には「高山植物園」を開園して、普及・啓発を行っています。
レブンアツモリソウのようなラン科の植物の種子は、発芽に必要な貯蔵養分を持ちません。そのため、発芽成長には共生菌の助けが必要となりますが、町の高山植物培養センターでは無菌培養で約1万株が栽培されており、共生菌培養株の栽培にも取り組んでいます。
高山植物園では礼文島に咲く約50種類、2万本もの高山植物が栽培されていて、運がよければ8月中旬までは、温度管理された無菌培養のレブンアツモリソウにお目にかかることができるそうです。
日本の各自治体にはそれぞれキャラクターがいて、まちのPRなどに活躍していますが、礼文町にもマスコットキャラクターがいます。その名は「あつもん」。レブンアツモリソウの妖精で、顔の形がレブンアツモリソウの花にそっくりです。
プロフィールによると、「あつもん」は妖精なので性別がなく、森の中や草原に住んでいます。性格は優しくて穏やかなのんびり屋さん。礼文島に住む人たちと礼文島を訪れる人たちのことが大好きで、心に幸せの種を持っているそうです。その優しい心で、レブンアツモリソウの保護に、ますます活躍してほしいですね。
引用
礼文町:あつもんイラスト集
参考
礼文町:マスコットキャラクター「あつもん」サイト
礼文島観光情報:高山植物
北海道 花めぐり・庭めぐり:レブンアツモリソウ
環境省 自然環境・生物多様性:レブンアツモリソウ
環境省 北海道地方環境事務所:「レブンアツモリソウ保護増殖ロードマップ」概要版の公表について 及び レブンアツモリソウの保護事業について
岩崎園芸:アツモリソウ
北海道新聞2021年5月2日13面 :花と語れば「レブンアツモリソウ」
「花の浮島」ともよばれる礼文島には、300種類もの花が咲き、島固有の花はレブンアツモリソウをはじめ、レブンキンバイソウ、レブンウスユキソウなどもあります。日本の北端に咲く、礼文島固有の花々。これからも途絶えることなく、毎年美しい花を咲かせてもらいたいものですね。