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だれもが心に残る思い出を持つのが4月ではないでしょうか。学校では新学期、会社では新入社員を迎え人事異動もあって生活の節目に期待と緊張の中で、気分を一新して取り組む時。3月の別れとはひと味違う喜びと不安を感じることでしょう。心に残る思い出は揺れ動く気持ちの中で作られるのかもしれません。
「新しき出会ひの四月五日かな」藏本聖子
「一枚の転居通知の来て四月」大橋麻沙子
「さまざまの事思ひ出す桜かな」芭蕉
毎年めぐってくる4月は同じようでも、すこしずつ身の周りには変化が訪れます。自分の思いとは違う方向に物事が進んでしまう時、口惜しさや切なさを越えて自分を奮い立たせていかなければなりません。そんな心を慰めたり、励ましたりしてくれるのが桜の花です。
和風の月名に「夢見月」や「春惜月(はるおしみづき)」を見つけました。4月の始めがちょうどこんな時ではないでしょうか。「夢見月」は桜が夢見草ともいわれることから。咲いている美しさも夢のようならば、散っていくはかない姿も夢のようだからでしょう。桜が散ってしまうと春も終わりだなぁ、なんと短いことか、と春を惜しむ心が湧くので「春惜月」とも。さまざまな名前をつけて花の季節を我がものにしてしまうなんて、なかなか欲張りな楽しみかたですね。実はこれらの月名は3月「弥生」の別名なのです。4月に入りましたが季節感は旧暦の歳時記でしばし楽しみませんか。南から進む花だよりが日本列島を花霞で包みながら北上していきます。
満開の桜もやがて散ると、木々は萌え出た若葉が光を通して輝き景色はガラッとかわっていきます。気が早いようですが、4月の農家はもう秋の収穫に向かって準備にかかる時なのです。伊勢神宮や住吉神社では農家の田植えに先立ち、神さまへ捧げるお米を作る神田(しんでん)で田植えの神事が行われます。正に新年度のスタートを切るのです。日々の生活の中で新しいことに挑戦するも良し、これまでの自分を鼓舞して更にステップアップを誓うのも素晴らしいですね。また惰性になってしまっていることを見直すチャンスかもしれません。春の区切りを生かして、花の中で迷いながらも今までとは違う一歩を踏みだしませんか。
まだ明るい! 春が深まった喜びです。すぐに暗くなってしまっていた冬の後ですから、昼間の時間が延びていくのを実感できます。1日24時間は変わらないのに、まるで1日が長くなったように得した気分になるのが春の「日永」です。さあこの時間をあなたはどう過ごしますか?
私は昨年、道端になんともかわいらしい花、といっても雑草ですが、とても可憐に感じ写真に撮りハガキを作りました。1年前の4月は緊急事態宣言が発出され、皆が新型コロナウイルス感染症を恐れ外出を控えたため、いつもは賑わう街の中心がひっそりとしてしまう言いようのない不安に覆われていた時期でした。「日永」に「ステイホーム」も重なりましたので、ふだん特に用事がなければ連絡をしない友人に「大丈夫ですか?」というメッセージを添えてハガキを送ってみたのです。人と会うことが難しい時でしたのでたいへん喜ばれ「ありがとう」のメールや電話を貰いました。作業はちょっぴり大変でしたが充実した気持ちを持てたのが嬉しかったです。
なんとなく過ごしてしまえば知らないうちに過ぎていってしまう春の「日永」はパッとつかまえなければもったいない! やがて終わってしまう春は惜しみながらゆっくり楽しむ時にしてくださいね。