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女の子のいる家庭でかかせないのが雛祭り。雛人形や調度類を段に飾り、白酒と菱餅をお供えしたら桃の花を活けて、と女の子の幸せを祈る行事は華やかです。
かつて人形は神霊の依り代と考えられ、節供がすむと供物をささげて水に流したり、氏神様の境内に納めたりされていました。子供が無事に育つことが難しかった時代に親が捧げた祈りの心が源流です。現在のような形になったのは江戸時代に入ってからとのこと。平安時代の宮中における殿上人の世界を模した雛人形は、大名家のお姫様のお輿入れのリストにも載り、やがて富裕な商人の間にも広がって名品が作られました。この時期になると各地の美術館などで大切に伝えられてきたお雛様を目にすることができるのはたいへん嬉しいことです。
豪華に雛人形を飾らなくとも、桃の花一枝を差した花瓶の横に雛あられを置くだけでも充分でしょう。錦糸卵をたっぷりのせたちらし寿司に大きなはまぐりのお吸い物を添えれば雛祭りの気分も盛り上がります。寒さはまだ残りますが桃の節句で華やかに弥生をスタートさせてみませんか。
寒い寒いと口癖のようになっていましたが、5日は啓蟄です。冬籠もりをしていた虫たちが這いでてくる時期といわれています。土の中も温度が上がってきているということですね。農家の方にうかがうと3月は1年の農作業の始まりでもあるそうです。先ずは苗を育てるための土づくり。土はよく乾燥させ細かく砕いたら肥料を混ぜて苗箱にセット。3月中頃になると種籾の準備です。健康で栄養分がつまった籾を選別しなくてはなりません。塩水の比重を利用すると重い籾を取り出すことができるそうです。選ばれた種籾は1週間ほど水に浸した後水温32度の中に1日入れておくと発芽を始めるとのこと。
このあたりまで来ればもう3月も終わりになり、いよいよ4月は育苗用のハウス作りへと進みます。秋の実りに向かって種作りは寒いうちから始められているのですね。
渡り鳥が越冬を終えて春の渡りを始めるのが3月頃から。春の陽気が立つのを感じるのですね。旅立ちの前、白鳥や雁は刈り取ったあとの田圃で稲の落ち穂を食べて過ごすということです。北の繁殖地への長旅を前に準備に怠りはありません、新しい生命への旅立ちです。
学生たちの3月は1年の努力の成果とともに迎えます。進級と卒業、新しい門出へ向かう希望の月。社会人でしたら年度替わりで昇進や転勤とやはりドキドキしながら過ごす時ではないでしょうか。制服やスーツを新調したり買いそろえる品々を選んだりと、将来への夢が膨らみ、また新しい環境への緊張も感じることでしょう。
木々の芽吹きを感じ花の便りを聞きながら、いよいよ生き出づる「いやおひ」にならい、分厚いコートを脱いで新たな命へ一歩を踏み出す、それが弥生3月。まずは深呼吸、早春の空気を胸いっぱいに吸ったらさあ、不安を乗り越え前進です。