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今では、スーパーやコンビニ、デパートでも、パックにはいった沢山の豆腐が売られています。「木綿」「絹ごし」「充填」「寄せ」などが主な豆腐の種類になります。
「木綿」「絹」は、漉し布の違いと思われている方も多いのでは?これは舌ざわりからきた呼び名。実際は、にがりや凝固剤を入れた後にできた「寄せ豆腐」をそのまま固めているか、湯をぬいて固めていくか、水分量の違いといえます。元来豆腐は生もので、保存のきかないものでした。「充填豆腐」の出現により、大量生産と、1週間程度の保存期間が可能になりました。
10月2日は、豆腐の日。現在は世界の健康食「TOFU」として注目されている豆腐です。豆腐よもやま話を見ていきたいと思います。
豆腐の製造は、第二次世界大戦まで禅寺で作られていた手法をほぼそのまま踏襲し、にがりで固めていました。
しかし、戦中は火薬の原料となるマグネシウムが必要となり、にがりの主成分である塩化マグネシウムが手に入らなくなりました。そこで、にがりに代わる凝固剤として登場したのが硫酸カルシウムです。硫酸カルシウムによる製法は、そのまま固める絹ごし豆腐をつくるのに適していました。また、アメリカでヨーグルトを固めるために、使われていたグルコノデルタラクトンが、豆腐を固める凝固剤として使われるようにもなりました。
かつて豆腐の大きさは地域によってさまざまでした。そこで豆腐を数えるのに、包丁でカットするため、一丁、二丁という確定した単位ではない言い方をしたと思われます。現在、都心では一丁は300~350gが多く、地方では若干大きめの350~400g、沖縄では一丁1kgが一般的です。
豆腐や豆乳は、タンパク質や脂質など体の基礎的な栄養素のみでなく、体を調節して健康を維持増進させる食品「機能性食品」としても注目されています。大豆をそのまま食すよりも、消化吸収がよく、脂質を抑えて栄養バランスよく摂れるのが良いですね。
しかし、豆腐を食べていれば大豆の栄養がすべて摂れるかというとそうではありません。大豆に含まれる食物繊維が、豆乳作成のときに「おから」にのこっています。豆腐を使う時、おからも摂れると、大豆の栄養を存分にいかすことになりますね。
それにしても豆腐については、科学的に多くの報告があるようです。イソフラボンが女性のエストロゲンと似た働きをしたり、また血流や血圧、コレステロールに影響したりする成分として、主に以下のものが注目されています。
・たんぱく質・リノール酸
・レシチン・コリン
・サポニン
・イソフラボン
・トリプシンインヒビタ
・オリゴ糖
・カルシウム
・ビタミン
・食物繊維
参考・参照:全豆連 豆腐の栄養と健康
豆腐の成分の個々の効能もさることながら、食材として多くの料理にあうため、他の食品との間で相乗的な働きも期待しつつ美味しくいただけるというのがポイントです。
なお、豆腐はカロリーが抑えめで、水分も多いため満腹感が得られ、かつ、栄養不足にならずにダイエットに活用できるという点でも良いですね!
昔から豆腐など精進料理を食べていた僧侶や、 豆腐を多く食していた地域に長寿者が多いなどの報告もあり、長寿食ともいえるかもしれません。肉食の多い欧米等でも豆腐に関心が高まり、「TOFU」の名は、世界で通用する言葉となっています。
豆腐の美味しさを決めるポイントは、大豆そのものの味と豆腐づくりの技術にあります。豆腐の原料は、大豆・水・にがり。シンプルだからこそ、繊細な手作業が仕上がりを大きく左右し、作る人の「人となり」や「考え」、その日の「気分」までも、鏡のように映し出すのだと、職人さんは言います。
大豆の80%はアメリカから輸入されていますが、アメリカの大豆は搾油用に改良されてきた歴史があり、国産大豆とはやはり味が異なります。国産大豆には甘みがあり、日本人が美味しいと感じるのはそのためです。また、にがりを使った豆腐は、大豆の風味と歯ごたえがあると思われる方が多いようです。にがりの主成分は、塩化マグネシウムですから、”塩化マグネシウム使用”と表示があるものは、にがりを使っているとみてよいでしょう。
さて、一般社団法人 日本豆腐マイスター協会は、きっての豆腐好きが集まり、品評会を実施したことが始まりで作られた団体だそうで、現在は認定試験の講座やワークショップも実施しています。昨年までは「豆腐マイスターによる手作り豆腐選手権」なるものも開催されていたようです。美味しい豆腐の研究のために、豆腐マイスターをめざしてみるのもありですね。
大豆を原料としているものを豆腐としていますが、大豆を使っていなくても、豆腐に似た食感のため、豆腐と名付けられている、美味しいけど豆腐でない豆腐たちには次のようなものがあります。
(以下引用:一般社団法人全国豆腐連合会|豆腐の種類)
・卵豆腐
溶き卵に調味料を加え蒸したもの。
・ごま豆腐
ごま(胡麻)をすり、葛粉(または片栗粉)で固めたもの。ただし、大豆からのごま豆腐もある。
・くるみ豆腐
くるみを原料とする、ごま豆腐と同様の製法で作る。
・杏仁豆腐
中華料理のデザート。杏子の種の成分を入れ寒天で固めたもの。
江戸時代、庶民の食べ物として、豆腐の食文化は、本格的に花開きました。天明2年(1782)に刊行された豆腐料理の本「豆腐百珍」は、爆発的な人気を呼び、翌年「豆腐百珍続編」、翌々年「豆腐百珍余禄」が出版され、当時ブームとなった料理本〈百珍物〉のさきがけといわれています。多彩なメニューをみていると当時の豆腐の普及ぶりがうかがえます。
現在も、現代語訳された「豆腐百珍」が豆腐の料理本として流通しています。豆腐田楽、白和え、飛竜頭など、シンプルなものから凝ったものまで、豆腐メニューの多彩さに豆腐愛を感じます。
江戸時代の豆腐百珍をまとめている個人のサイトや、現代版豆腐百珍のランキングやレシピを案内しているサイトなど、検索すると、お好みにあったレシピに遭遇できそうです。
今月も、心と体をお大事に健やかにお過ごしください。
参照サイト
・一般社団法人全国豆腐連合会
・umamiのくにから
参照文献
「豆腐と乾物料理」婦人之友社