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一年ではじめに収穫される牧草は一番草とよばれています。冬の時期において、一番草は牛たちの貴重な食糧になるので、この一番草をいかにうまく保存できるかどうかが、その年の牧畜の経営を左右します。東北地方では5月に収穫が始まるところもありますが、北海道ではほとんどの地域が6月中旬にスタートします。
刈り取った牧草は平らにならし、全体が乾燥するように何回も反転作業を繰り返します。天気がよければ、ロール用だと3日かけて乾かします。
牧草を貯蔵するには均一に乾燥させることがもっとも重要なので、広げて乾かしている最中に雨に降られるのが一番困ります。そのため酪農家は、牧草を刈り取る時期を決めるのに、とても慎重になります。刈り取った後に雨が降ると牧草の質が低下する…。かといって、晴れが続く日をずっと待っていると、草が伸びすぎて硬くなってしまう…。毎年この時期になると、刈り取る日をいつにするか、酪農家たちは天気予報とにらめっこしています。
さらに、二番草は一番草のおよそ50日後、つまり8月上旬に収穫が始まります。この時期は気温も湿度も高く、天気が不順な日も多いので、酪農家の方たちは一番草よりもさらに慎重に天気予報を確認します。
3日ほど牧場に広げて適度に乾いた牧草は、ロールベーラーという機械で圧縮した後、ロールケーキのようにクルクル巻いてロール状にします。直径は1.2mほど。大きいものだと1.5mにもなります。
この時期に北海道をドライブすると、牧場などに無造作に牧草ロールが転がっている風景を見たことがある方も多いと思います。遠くから見ると、色といい形といい、まるでお菓子のクリームコロンのように見えますね。
丘に転がる茶色いクリームコロンのような牧草ロールは、しっかり乾燥させた後、白や黒のフィルムでラッピングされます。ラッピング作業は、牧草ロールがすっぽりと入る大きな袋に詰め込むのではなく、ラッピングマシーンという機械を使って、幅50~75cmほどのフィルムで包帯のようにグルグルと巻いて牧草を覆います。
空気に触れないようにきっちり巻かれた牧草ロールは、4ヵ月ほどかけて発酵させ、秋冬用の牛のエサになります。昔はサイロで牧草を発酵させていましたが、今はラッピングで保存するほうが主流となっています。
ラッピングのフィルムの色は白や黒がほとんどですが、中にはオレンジや緑などもあります。白と黒をうまく巻くと、白と黒のシマシマのラッピングにもなります。牧場にはいろいろな色の牧草ロールが転がっていますが、発酵の速度は色によってそれほど変わらないとされています。
参考
北海道別海町観光協会「いかに牛がいっぱい食べたい草を作るか ~一番草の収穫その1~」
JapanQuality「最初の牧草収穫は、その年の経営を左右する大一番【一番草】」
北海道農政事務所「牧草の収穫」
北海道では牧草の一番草の刈り取りは6月中旬ころに始まり、そろそろ牧場に牧草ロールが転がり始めます。この牧草ロールとよく似ているのが麦わらロールです。麦わらロールはその名のごとく、小麦を収穫した後の麦わらをロール状にしたものです。北海道では小麦の収穫は7月下旬ころに行われるので、来月になると麦畑でコロコロと転がっているのを目にするようになります。麦わらのロールは、牛や馬の寝床として利用されます。牧草ロールは牛のご飯、麦わらロールは牛の寝床。どちらのロールも牛にとって大事なロールです。