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3月は仲春、歳時記では春も半ばです。だからでしょうか、春の主役達もしっかりと姿を現すようになりました。街中を歩いていて感じる道路脇にふくらむ沈丁花(ジンチョウゲ)の香りであったり、足を止めたささやかな植え込みの土を這う蟻や、草の陰にサッと走り込むトカゲの姿は早春ならでは。春は大地を実感することが多い季節ではないでしょうか。
無言を決め込んでいた地面から柔らかい緑の芽がのぞいたときはハッとさせられます。こんな緑の芽生えに誘われて動物たちも顔を出すようになるのですね。虫や動物が這いでてくる「啓蟄」を前に、草木はすでに準備を始めています。大気には花粉が飛び悩まされる方も多いと思いますが、花粉が飛ぶということは木々や植物の生命力が旺盛なしるし。大空から大地まで、自然の世界では命を生み出して育んでいく季節なのです。
都会であってもゆっくり見まわしてみると、鳥のさえずりも今までより大きく聞こえてきます。咲き始めた梅や桜の花の蜜を吸って春を満喫しています。冷たい風が吹くときでも春を実感できるのは嬉しいことですね。
さあ双葉が芽生え、虫や動物たちが顔を出してくる大地を見てみましょう。土は私たちに欠かすことのできない多くのものを産みだしてくれています。食料はもちろん、衣食住を考えたとき、大地と関係ないものはないような気がします。
野菜や果物はスーパーに行けばいつでも簡単に手に入り、それを育てる大地にまでなかなか目がいくことはありませんが、農家の方は土を大切にしています。作物を収穫するためには、栄養たっぷりのよい土をつくる努力をし、さらに病気になって作物が枯れたり傷んだりしないように気を配ります。土の中にはよいものも悪いものも含まれていますが、よいものは動物や植物の栄養となり、生命を育んでいるのです。
ふだんは踏みつけてばかりいる大地を「啓蟄」を思って目をやると、たくさんの虫や生き物を守っていることにも気づかされます。いつも静かに存在しているこの大地を大切に守っていかなければ、と思います。
参考:「啓蟄や生きとし生けるものに影」 斎藤空華
枯れ枝にちょんと現れた若い芽はいつしか色を持ちはなやかに咲いていきます。「春に三日の晴れなし」とよくいわれますが、春一番が吹いていよいよ春の訪れにワクワクしていると、雨が降ったりまた思わぬ寒さにも驚かされます。春はそうやすやすとはやって来てくれないのだな、と思い知らされますね。
花曇り、花冷えなど春の紆余曲折を表すことばも日々の会話にのぼります。寂しかった空き地は、やがて菜の花で彩られ、春の山は「山笑う」と形容されるように若葉と春の花のやさしい色で淡くかすんで見えることでしょう。
進みゆく春を過ごしながら、新しい生活の始まりに胸ふくらみます。日常生活はそれほど変わらないなぁ、と思っている方も積極的に春を感じることで新しい気づきや発見があり、春のエネルギーを取り入れていけるかもしれません。
満開の桜までもう少しの辛抱です。顔を出して出てきた虫を探してみませんか?