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もしかしたら、10代や20代の若者は、鏡開きや蔵開きの言葉も聞いたことがないかもしれません。そこで今回は、新年らしく温故知新ということで、この2つの伝統行事についてわかりやすく、その由来などをご紹介します。
鏡開きや蔵開きについて説明する前に、まずは鏡餅についてお話しておきます。鏡餅というのは神様へのお供え物であり、元旦にやってくる歳神様の拠り所でもあります。なぜ鏡餅と呼ばれているのかは諸説ありますが、三種の神器の鏡に形が似ていることからというのが有力な説のひとつとなっています。
この鏡餅は、お正月が終わって神様が帰られた後に、無病息災を願ってお雑煮やぜんざいなどにしていただきます。鏡餅は大きすぎてそのまま食べることができないため、小さく分割して食べます。このとき餅は、刃物を使うことなく手や木槌で小さくします。
刃物を使わないのは、鏡餅が武家の文化だったことに由来します。
武家にとって「切る」は切腹をイメージすることになるため縁起が悪く、手や木槌でお餅を割っていました。ただ「割る」という言葉も縁起が良くないということで、末広がりの意味のある「開く」が使われ、鏡餅を割って食べる行事を鏡開きと呼ぶようになりました。
一方の蔵開きですが、こちらは年末に閉じた蔵を新年になって初めて開ける日のことで、神主さんを呼んで商売繁盛を祈願します。本来は蔵開きと鏡開きは別々の行事なのですが、歴史の流れの中で同じ日に行われるようになりました。これについては、後ほど詳しく説明します。
いずれも新年に行う伝統行事ですが、それぞれの目的や由来が違うことを覚えておきましょう。
鏡開きや蔵開きはいつするものなのか。これは少し話が長くなるので、結論から先にお伝えしておきます。一般的には1月11日が鏡開き、蔵開きをする日となっています。
鏡開きはすでにお伝えしたように、武家の風習を引き継いだもので、1月20日に具足(ぐそく ※武具)にお供えしたお餅を食べていました。江戸時代初期までの松の内(お正月期間)は1月1日から1月15日まででしたが、20日が三代将軍である徳川家光の月命日になったことで、鏡開きを1月11日に行うようになります。
そうなるとまだ神様が餅に宿っているときに鏡開きをすることになるので、政府は松の内を1月7日までとするように通達を出します。ただし、これに従ったのは江戸周辺の地域だけだったので、関西などでは現在でも1月15日までを松の内としています。このため、それらの地域では1月20日に鏡開きを行っています。
蔵開きはというと、商家は初荷のある1月2日が蔵開きで、武家は新年の吉日に米蔵を開いていました。ところが鏡開きが1月20日から1月11日になり、この日が旧暦で大安になるということもあって、蔵開きもそれに合わせて1月11日に行われるようになりました。
日本酒が好きな人なら、蔵開きというと酒蔵の蔵開きを思い浮かべるかもしれません。でも、酒蔵の蔵開きは1月11日とは限りませんよね。それどころか、秋に蔵開きをする酒蔵もあります。酒蔵の蔵開きは年始の蔵開きとは違い、日本酒の造り始めもしくは、造り終わりに行われます。
最近の日本酒は1年を通して製造されていますが、江戸時代のルールで日本酒は冬に造るものと決められていたので、10月から3月までが酒蔵の蔵開きの期間という習慣が残っています。
日本酒の蔵開きはお客さんを招いてのお祭りのようなもので、酒蔵によっては10種類以上の日本酒を数百円で飲み比べることができます。すべての酒蔵が行っているわけではありませんが、これからの季節は、全国各地で酒蔵の蔵開きが始まります。日本酒が好きな人は、近所にある酒蔵の蔵開き情報をチェックしておきましょう。
参考
日本鏡餅組合
「さすが!」といわせる大人のマナー講座(PHP研究所)