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「冬至」は「一陽来復」ともいわれます。陰陽説では進んできた「陰」が極まる日となりますが、冬至からは「陽」が戻って来るという希望の日でもあるのです。それでは「冬至」の七十二候をみてみましょう。初候は「乃東生(なつかれくさしょうず)」で、夏至の頃に枯れてしまった蛍草が芽を出す頃となります。次候は、大鹿の角が落ちる時期とする「麋角解(さわしかのつのおつる)」が続きます。末候の「雪下出麦」はもう麦の芽が雪の下では出ているようですよ、とこれから伸びてくる麦に思いを馳せています。
「冬至」という季節は、私たちの目に触れることがなかなかない自然の世界で起こっていることを、そっと語ってくれています。生き物にとっての厳しい自然を、冷静な目で観察してきた叡智が、暦に詰まっていることをあらためて感じます。
「一陽来復」は、何か上手くいかないことが続いたあとに、ようやくやって来る幸運のきざしのたとえとしても使われる、希望を予感させてくれる言葉です。冬の寒さの中にも静かに春にむかって何かが芽生え始めているこの季節、私たちも今年を省みつつ何か次への一歩を踏み出す勇気をもちたいですね。
柚子の汁は酸味が強くて、と苦手な方もいらっしゃるかもしれませんが、香りのよさはなんとも心が癒されます。お椀の蓋をとったときに立ちのぼる柚子の香りに、思わず目をつぶり胸いっぱいに吸い込んで「ああ、いい香り」とつぶやきたくなります。今日は、その柚子をお風呂に浮かべて無病息災を祈る、という風習がありますね。立ちのぼる芳ばしい香りに身体も温まり、なんとも贅沢なバスタイムとなることでしょう。
とはいえ、柚子をまるまるお風呂に入れてしまうのはもったいないなぁ、と思う方もいらっしゃいませんか? わかります、そうですよね。ちょっとした知恵を働かせて柚子を十二分に使ってみませんか。皮は少し削って料理に使います。汁もポン酢として使いましょう。そのあと、柚子を布巾などでてるてる坊主のように包んでしっかり縛り、それをお風呂に入れます。これで充分、柚子の香りを楽しむことができますよ。
「生まれ出るごとくに柚子湯上がりけり」 高橋悦男
「毛穴より疲れ抜けゆく柚子湯かな」 森山暁湖
柚子湯にひたる喜び、一年の終わりをむかえる感慨が感じられますね。もう少し残っている今年です、ちょっとのんびりして柚子の香りの中で手足を伸ばしてみませんか。
「冬至」の時季はまた、クリスマスシーズンでもありますね。気がつけば街にはイルミネーションが輝き、明るいはなやぎで溢れています。この時季の装飾に欠かせない鉢植えにポインセチアがあります。まるで花のように真っ赤に開いている部分は、実は苞(ほう)と呼ばれる葉なのです。花は真ん中に蕊(しべ)のように見えている部分です。まるで燃えているような勢いをこの鉢植えに感じます。
和名を猩々木(しょうじょうぼく)といわれるのをご存じですか? 「猩々(しょうじょう)」は想像上の動物で、赤い毛でおおわれた身体に人の顔を持ち、お酒が大好き。能楽では、汲めども尽きぬ酒の壺を前に猩々が、赤い顔をして酔いの中に喜びの舞を舞うおめでたい演目があります。日本に伝えられたのは明治の半ば、燃えるような葉の赤に猩々を連想したのでしょう。今では「クリスマス・フラワー」として季節を鮮やかに彩ってくれています。
今年の二十四節気は「冬至」でおしまい! 新年を迎えると冬も本番、寒に入ります。忙しい中にもあれこれと楽しいことがあることでしょう。そんなときだからこそ歳時記の言葉に耳をかたむけながら健やかに過ごしませんか。