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毎回お送りしている俳句の心得。今回のテーマは「漠然とした季語の使い方」です。季語のなかには、「行く春」や「小春」など具象に欠け、漠然とした季語が存在しています。それを使うためには、はっきりした具象が必要です。〈春の夜の少しのびたるもやしの芽 川上弘美〉〈秋深し大きな黒き指輪はめ 星野立子〉など、季語と具象の関係が大切だとわかります。
俳句をたしなまなくても、知っているとちょっと得意、おまけにボキャブラリーも増える、そんな古語の世界を少しだけご紹介しましょう。
さて、シリーズでお送りしている古語の名詞ですが、こちらもちょうど半分に差し掛かりました。俳句にはリズムも大切ですので、その句にあった文字数の古語を使うことも推敲のひとつなのです。
今回は「た・つ」の名詞の読み方です。レッツ・チャレンジ!
Q1 「誰」 *ヒント:1文字
Q2 「筍」 *ヒント:4文字
Q3 「闌」 *ヒント:4文字
Q4 「掌」 *ヒント:5文字
Q5 「土筆」 *ヒント:5文字
Q6 「蹲踞」 *ヒント:4文字
Q7 「恙」 *ヒント:3文字
Q8 「燕」 *ヒント:5文字
Q9 「終」 *ヒント:2文字
Q10 「夫」 *ヒント:2文字
答え合わせで古語の意味を覚えよう!
今回は知っている漢字が多く見られました。
答えと意味は以下の通りです。
A1 「誰」 読み:た(たれ)
意味:だれ。不特定の人称代名詞
〈春の夜のそこ行くは誰そ行くは誰ぞ〉正岡子規
A2 「筍」 読み:たかむな(たかんな)
意味:たけのこの別称。春の季語
〈たかんなや吉良累代の墓所〉加古宗也
A3 「闌」 読み:たけなは(たけなわ)
意味:最も盛んなとき。真っ最中
〈たけなはの大学祭に銀杏散る〉森田 峠
A4 「掌」 読み:たなごころ
意味:手のひら。「た」は「手」の意
〈春の雪重ぬべくあるたなごころ〉野澤節子
A5 「土筆」 読み:つくづくし
意味:ツクシの別称。春の季語
〈つくづくし筆一本の遅筆の父〉中村草田男
A6 「蹲踞」 読み:つくばひ(つくばい)
意味:庭に供えてある水を張った手水鉢
〈つくばひの藻もふるさとの暑さかな〉芥川龍之介
A7 「恙」 読み:つつが
意味:病気。わずらい
〈清水飲む恙の胸の板濡らし〉山口誓子
A8 「燕」 読み:つばくらめ
意味:ツバメの別称。夏の季語
〈町空のつばくらめのみ新しや〉中村草田男
A9 「終」 読み:つひ(つい)
意味:終わり。最後
〈氷壁に着くゴンドラの終の駅〉山口誓子
A10 「夫」 読み:つま
意味:妻から夫を呼ぶとき
〈惜春やことば少なき夫とゐて〉三橋鷹女
(参照:俳句のための古語辞典 株式会社学習研究社/広辞苑/合本俳句歳時記/俳句開眼100の名句 ひらのこぼ・著 草思社)
今回は見慣れた漢字の意外な読み方が多かったのではないでしょうか? けれども、俳句に慣れた方には使い慣れている、ほぼ常識的な言葉なのです。十七文字に収めるのには、多様な言葉を使いこなすことが必要なのですね。
「かっこよくて面白い古語の世界」これからも続きます。お楽しみに!