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さて、松尾芭蕉は「松のことは松に習へ」という言葉を残しています。これは、先入観を捨てて素直にものごとに接すれば、そこに本質が見えてくる、という意味だそうです。つまり、見慣れたものでもよく観察すると、新しい発見があるということ。
俳句はよく3Dの世界に例えられます。対象を縦横斜めに見たり、縦に割ったり、横に切ったり……。俳句を通して言葉遊びをすることで、そうした一辺倒でないものの見方が身につくかもしれませんね。
今回も、俳句をたしなまなくても、知っているとちょっと得意、おまけにボキャブラリーも増える、そんな古語の世界を少しだけご紹介しましょう。
俳句を完成させるためには、推敲(何度も考え直すこと)が必要であり、句の格式を高める言葉選びの一つが古語なのです。
古語には、名詞・動詞・副詞など、さまざまな言葉がありますが、まずは簡単な名詞からご紹介しています。
今回は「け・こ・さ」の名詞の読み方です。レッツ・チャレンジ!
Q1 「健気」 *ヒント:3文字
Q2 「今日」 *ヒント:2文字
Q3 「虚空」 *ヒント:3文字
Q4 「去年」 *ヒント:2文字
Q5 「谺」 *ヒント:3文字
Q6 「東風」 *ヒント:2文字
Q7 「言祝ぎ」 *ヒント:4文字
Q8 「小叢」 *ヒント:2文字
Q9 「今生」 *ヒント:4文字
Q10 「小波」 *ヒント:4文字
答え合わせで古語の意味を覚えよう!
見慣れた漢字が多数ありましたが、読めましたでしょうか。
答えと意味は以下の通りです。
A1 「健気」 読み:けなげ
意味:勇ましいこと
〈鰯雲小舟けなげの頭をもたげ〉西東三鬼
A2 「今日」 読み:けふ(きょう)
意味:本日。現在
〈けふもいちにち風をあるいてきた〉種田山頭火
A3 「虚空」 読み:こくう
意味:空。大空
〈滴りのきらめき消ゆる虚空かな〉富安風生
A4 「去年」 読み:こぞ
意味:昨年。去年。「去年今年」と書いて冬の季語
〈去年今年貫く棒の如きもの〉高浜虚子
A5 「谺」 読み:こだま
意味:樹木に宿るたましい。やまびこ。木霊、木魂とも
〈手をうてば木魂に明くる夏の月〉松尾芭蕉
A6 「東風」 読み:こち
意味:東から吹く風。春風。春の季語
〈梅東風やくるま座内に児を放つ〉平井さち子
A7 「言祝ぎ」 読み:ことほぎ
意味:言葉で祝うこと。また、その言葉。寿とも
〈ことほぎに人来てゐたる朝寝かな〉富安風生
A8 「小叢」 読み:こむら
意味:森や林。小群とも
〈小叢より富士見えて夏果てしかな〉飯田龍太
A9 「今生」 読み:こんじょう
意味:生きている、この世
〈今生と思へぬ声に雁渡る〉大野林火
A10「小波」 読み:さざなみ
意味:小さい波。細波、漣とも
〈小波の如くに雁の遠くなる〉阿部みどり女
(参照:俳句のための古語辞典 株式会社学習研究社/広辞苑/合本俳句歳時記/俳句開眼100の名句 ひらのこぼ・著 草思社)
── 今回は普段目にする漢字の別の読み方が中心でしたが、いくつ読めましたか?
古語を新しい言語としてとらえるならば、先述したように3Dな言葉のひとつなのかもしれませんね。
「かっこよくて面白い古語の世界」……これからも続きます!お楽しみに。