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日本でパン食が始まったのは明治時代です。ヨーロッパで主に食べられているパンは、皮が硬いバゲットなどのハード系ですが、日本ではふんわりとしたパンが主流でした。中でも、四角い型に入れて焼くパンのことを「食パン」とよぶようになりました。
よく考えると、元々パンは食べるものなのに、そこにわざわざ「食」の字をつけるなんておかしな話ですが、四角いパンをあえて「食パン」とよぶようになった由来は、諸説あるようです。
映画などで、木炭でデッサンする時に練り消しゴムの代わりにパンを使うというシーンを見たことはないでしょうか。木炭で描いたものを消す時、硬い消しゴムだと紙に傷がつきやすいので、練り消しやパンを押し当てるようにして消しますが、この時に使う「消しパン」と区別するために、食べるパンを「食パン」とよんだ、という説があります。
また、英語で浅い片手鍋のことを「パン」といい、フライパンやミルクパン、ソースパンなどの種類があります。この、鍋=パンと区別するために、食べるパンを「食パン」とよぶようになった、という説もあります。
そのほかにも、「主食用のパン」が省略されて「食パン」になった説、西洋料理のもととなる「本食パン」が省略されて「食パン」になった説などがありますが、由来の詳細はよくわからないようです。
〈参考:イオン「食パン ~日本人の食事に合わせて進化したパン~」〉
〈参考:カメリア「『食パン』名前の由来とは?〜日本発祥のパン〜」〉
食パンを作る時は、四角い型に生地を入れて焼きます。この時、型にフタをして焼くと四角い角型食パンが、フタをしないで焼くと山型食パンができあがります。パン業界ではこれらをそれぞれ、角食(かくしょく)、山食(やましょく)とよんで使い分けをしていますが、一般的にはあまり使われない業界用語です。
ところが北海道では、角食、山食というパン業界の専門用語を、普段の生活で当たり前のように使います。兵庫でも角食という用語が使われているようですが、なぜ北海道と兵庫で使われるようになったのかは不明です。
食パンブームで、日本中に食パン専門店が増加していますが、札幌には食パン専門店だけでなく、店名に「角食」がつく“角食専門店”も存在しています。でも、他府県から訪れた人が角食専門店という文字を目にした時、それがパン屋であると理解できるかどうかはわかりませんが…。
山型食パンは、イギリスパンという呼び名でもおなじみです。生地を四角い型に入れてからフタをしないで焼くので、上が山型になります。ホームベーカリーで普通に焼くと、このような形になりますね。
パン業界では、この山型食パンを「山食」とよびますが、北海道でも山食といういい方をして、角食と区別します。
山食はフタをしないで焼くので、その分、気泡が多くなり、角食よりも大きくふくらみます。また、一般的に、生地に砂糖などの甘みや乳製品を加えない場合が多いので、焼くと、パリパリ、サクサクとした軽い食感になります。
食パンには材料や形の細かい定義は特になく、食パンというと、四角い型に入れて焼いたパンのことをさします。角食のほうが四角いので、大量生産・流通に向いているかもしれません。なぜ北海道民が角食、山食という言葉を使っているのか、その詳細はよくわかりませんが、世間は今、空前の食パンブーム。いろいろな食パンを食べ比べてみるのも楽しいかもしれませんね。