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画像提供:東京国立博物館 Image:TNM Image Archives
「ゆかた 浴衣 YUKATA」展では、サブタイトルに「すずしさのデザイン」と添えられています。私たちが無意識に着ているゆかたの模様(特に伝統的な意匠)には昔から吉祥模様と呼ばれてきたモチーフが多く描かれています。そして、ゆかたは涼を求めるという特性から、模様で涼しさを表現しているものが多くあります。まさに「すずしさのデザイン」の宝庫がゆかたなのですね。泉屋博古館分館の展示室は、エントランスから左右に分かれていて、全六章に分けてゆかたを全方位から分析、展示しています。第一章「描かれたゆかた」から第三章「型染めのゆかた いきの美意識」までと、第四章「絞りのゆかた」から第六章「人間国宝のゆかた」の二つに空間が分かれているのも時代の変遷を感じるのに見やすい展示だと思います。
武士が入浴中に着る衣として始まり、庶民の湯上りの普段着として定着したゆかたですが、当時のこだわりや美意識が込められているようです。浮世絵に描かれた湯上り美人や夕涼みの景色、現存する江戸時代の細密描写のゆかたなどが目を楽しませてくれるのはもちろんなのですが、その模様を選ぶ雛型本(今で言うカタログ)や型紙などの資料がまた素晴らしいのです。当時の女性たちが浮世絵の美人図や雛型本を見て「きれいだわ~私もこんな装いがしたい!」と思って発注したり自分で作ったりしていました。仕上がったゆかたの袖に手を通す瞬間はときめいたことでしょう。また資料の型紙の精巧さは素晴らしいものです!それだけでも立派な芸術品と言えるのではないでしょうか。さてその後、近代化の中でゆかたはどのように進化したのでしょうか。
明治に入ると少しずつ近代化の波と共に女性の衣服も西洋化がはじまります。その中でゆかたは夏の日常着から現在のような風物詩へと変化してきました。しかし、画家たちは描き続けました。日本画の美人画には浴衣姿の女性が多く描かれていましたし、黒田清輝をはじめとした洋画の巨匠も浴衣姿の女性を色鮮やかに描いています。洋装化が進む中でも、見られる存在の女性を描く一つのモチーフとして健在だったことがわかりますね。本展では美人画と言えば、の岡田三郎助《五葉蔦》(明治42年 泉屋博古館分館蔵)が展示されているほか、鏑木清方や清水崑がデザインを描いたゆかたも展示されています。
これらの作品は7月7日まで展示されています。展示期間中七夕コンサートなどのイベントもありますのでぜひ、お気に入りの夏衣を装って足を運んでみてはいかがでしょうか。
会期 2019年5月28日~7月7日
開場 泉屋博古館分館
開館時間 10時~17時(入館は16時30分まで)
休館日 毎週月曜日
イベント
6月27日 ランチタイム・ショートギャラリートーク(予約不要)
6月29日 15時~16時 講演会(予約不要)*当日10時より整理券配布 定員50名
7月5日 17時~18時 七夕コンサート(予約不要)
※詳細はリンクより公式サイトをご参照ください。
【引用・出典】
展覧会プレスリリース
展覧会図録