各地で桜が咲き始めました。例年より早いエリアもありますが、寒の戻りもあり、満開まで開花情報から目が離せませんね。都心も桜の名所はたくさんありますが、千代田区隼町の国立劇場では、希少で多様な桜を堪能できます。3月末までのさくらまつりでは、夜間のライトアップも実施。伝統芸能公演の場・国立劇場は、都心の癒しスポットの穴場でもあります。その国立劇場を存分に楽しむ方法をご紹介しましょう。

国立劇場(※画像はイメージです)


希少・多彩な桜が次々に満開に。3月中はライトアップも

内堀通りに面した国立劇場の庭では、丁寧に手入れされた木々や植物が季節を告げてくれます。3月31日までのさくらまつりでは、ソメイヨシノとは一味違った多彩な桜を愛でることができます。24日には、神代曙が満開に。ワシントンへ贈られたソメイヨシノの種から生まれた桜を、都立神代植物園で接木したのが原木、という神代曙。淡色のソメイヨシノよりもひときわ彩りが深く、蕾は一層濃い紅色で、少女の頰のように可愛らしい桜です。

神代曙の次にも、駿河桜、仙台屋、八重紅枝垂といった桜が、数日ごとに満開時期を迎えます。さくらまつり期間のお昼は、劇場外でも飲み物や軽食を販売中。月末の休日には舞台衣装体験コーナーなど、レアな体験イベントもあります。(開催時間に限りがあり雨天中止のイベントもありますので、詳しくは専用サイトでご確認ください)。期間中の夜間ライトアップは、21時まで。仕事帰りに、都心の夜桜散歩はいかがでしょうか。

そして国立劇場の庭ならではの粋な図らいと言えるのが、演目にちなんだ木々の存在。先に満開を迎えた熊谷桜は小ぶりな八重の花ですが、過去の歌舞伎公演「一谷嫩軍記」の際に、埼玉県熊谷市から寄贈されたもの。歌舞伎ファンなら誰もが知る名作、三段目の『熊谷陣屋』では、桜の若木と「一枝を伐らば、一指を剪るべし」の文言が、重要な伏線となっています。早春には三大名作の一つ「菅原伝授手習鑑」にちなみ、太宰府天満宮より寄贈を受けた、紅白の梅の木も花を咲かせます。名作に込められた日本人の四季への思いを、演目とともに庭の花々で体感できる。素晴らしいことですね。

満開を迎えた神代曙


小劇場での桜にちなむ歌舞伎公演は出色。歌舞伎を知るには情報サイトがお薦め

そしてこの季節にも、国立劇場の小劇場では、桜が印象的に登場する歌舞伎が上演されています。間もなく27日に千穐楽を迎えますが、役者たちとの距離感が近い小劇場での公演は、ファンには嬉しく貴重な試み。まず『元禄忠臣蔵―御浜御殿綱豊卿―』は昭和期に書かれた真山青果の新歌舞伎で、現代人の苦悩にも重なる登場人物の葛藤が描かれます。クライマックスの満開の桜の下での重厚な台詞が、胸に響きます。

続く歌舞伎舞踊劇の『積恋雪関扉』は常磐津を代表する大曲といわれ、雪中に小町桜が咲く逢坂の関が舞台。関兵衛実ハ黒主、小町姫・墨染実ハ小町桜の精、といった登場人物名が示すように、ユーモラスな問答から恋心を掻き口説く流れに移ったり、緊張感のある場面が一転して陽気な踊りになったりと、次々に歌舞伎ならではの仕掛けが繰り広げられます。夢幻に満ちた桜の精の登場に続く、墨染と黒主の豪快な見あらわしと大立廻りは、圧巻です。

また、歌舞伎鑑賞の手引きとしては、国立劇場歌舞伎情報サイトがお薦めです。上演中の演目をはじめ、歌舞伎の歴史や用語事典、歴代の演目などが網羅され、手広く頼りになります。伝統芸能で学ぶ英語教材『DISCOVER KABUKI(歌舞伎入門)』も、外国人への日本文化の紹介をサポートしてくれることでしょう。お花見から伝統芸能鑑賞まで、初心者からマニアまで、リアルからバーチャルまで。国立劇場を堪能し尽くして、お楽しみを増やしたいものですね。

『元禄忠臣蔵―御浜御殿綱豊卿―』『積恋雪関扉』上演は27日まで

国立劇場は、どの席からも見やすいと定評

情報提供元: tenki.jpサプリ
記事名:「 都心の癒しスポットの穴場、さくらまつりの国立劇場を存分に楽しもう