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新たな年、2019年には「平成」の年号が改元されるという行事も控えています。そんな歴史に残る新年ということもあり、初日の出を見に行く方も多いのではないでしょうか。気になる空模様は〈2019年 初日の出の時刻表〉を確認のうえ、しっかり防寒してお出かけくださいね。
今回は、新しい年を気持ちよく迎えるための正月の詩歌をご紹介しましょう。
ちょっと趣向の変わった歌をご紹介しましょう。通常元日の夜または2日の夜に見る夢を初夢といいますが、いい初夢を見られるように、と願って枕の下に宝船の絵を書いた紙を敷いて寝るという風習がありました。そのときに絵のかたわらに書かれた歌が次の歌です。
〈長き夜の遠の睡りの皆めざめ波乗り船の音の良きかな〉
「長い夜の遠い夢からみなさん目をさましなさい、波に乗っている船の音はよいものです」という意味でしょうか。正月2日(地方によっては3日)の夜、上記の歌が書かれた七福神の宝船の絵を枕の下に置き、歌を3度読んで眠ると「吉夢」を見られるという風習もあります。
しかし歌にはあまり意味はなく、これはかなで書くと、
「なかきよの とおのねふりの みなめさめ なみのりふねの おとのよきかな」となります。実は、上から読んでも下から読んでも同じになるのですが、これを回文(かいぶん)といいます。言葉遊びの一つです。
〈富士の山夢に見るこそ果報なれ路銀(ろぎん)もいらず草臥(くたびれ)もせず〉鯛屋貞柳
初夢に見るとめでたいものとして、昔からのことわざに「一富士二鷹三なすび」といいます。これにちなんだ狂歌です。富士山に行くには路銀(旅費)もかかるしくたびれる。夢に見るのが一番幸せだ、という意味のユーモラスな歌。初夢ではこんな句もあります。
〈願ふことただよき眠り宝船〉富安風生
〈宝船こころすなほに敷いて寝る〉横山蜃楼
〈初夢に大いなる鞠(まり)を貰(もら)いけり〉阿部みどり女
〈初夢の扇をひろげしところまで〉後藤夜半
なにか覚えてないけど、扇を広げてなにかいただくところで夢は終わってしまいました。ユーモラスな句です。
〈把手(とって)磨けど握手は嫌ひ寝正月〉香西照雄
大掃除でドアの取手は磨いたけど、人には会いたくない、ということでしょうか。人間関係のわずらわしさもお正月くらいは忘れたいですね。
お正月にはたとえば「初詣」のように、「初~」という言葉をよく使いますが、正月気分も数日で終わり、日常が戻ってきます。早い人は2日から、4日には仕事も始まってしまいます。2019年には7日からの人も多いかもしれません。
コンビニなどは365日開いていますが、新年初めての買い物は「買初(かいぞめ)」などといいました。
〈石段の変わらぬ堅さ初詣で〉桂信子
〈あこがれはここに小さく初日記〉香取佳津美
〈買初の小魚すこし猫のため〉松本たかし
さて、松が明けて14日か15日に行われる火祭りを「左義長(さぎちょう)」といいます。新年の飾りものや書初めなどを焼く行事です。「どんど」「とんど」などともいいます。この火で焼いた餅を食べます。
〈注連(しめ)を焼く火のはなびらに雪降れり〉野見山朱鳥
〈とんどの子去りし星空さがり来る〉中村六花
最後にまだまだ寒いのですが、なんとなく春の予感がしてくるような短歌を。
〈日おもては雑木(ぞうき)にこもる霜の気の照りあたたかし春めきしかも〉北原白秋
〈このごろの一日二日にわがやどの軒端のうめもいろづきにけり〉良寛
お正月はゆっくりと過ごして、新しい年の英気を養いたいところです。