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残り少ない秋という季節。この時季は、冬を迎えるための生活の季語があったり、冬が近いと感じる感覚的な季語があったり……。それらをおさらいしながら、去りゆく秋を惜しんでみてはいかがでしょうか。
日本には古くからの慣習として、冬が来る前にやっておくことが残っています。「冬用意」「冬支度」といい、生活の中で見たことがある身近なもの。その中のいくつかをご紹介しましょう。
○「障子貼る」
和室に欠かせない障子。現代は洋風の家が多いなかでも、和室があるお宅や寺院などは防寒対策として障子の張り替えを行います。それを秋に行ってきたそうです。ちなみに、「障子」自体は冬の季語となっています。
○「松手入れ」
松の木は、10月頃に古い葉を取り除き、十分手入れをしてから冬を迎える準備をします。各地にある名園などでは、庭師の鋏の音が響くのが、この季節。松は特に手入れがむずかしいとされていますが、松以外の植物の手入れをする「剪定」は春の季語です。
○「種を採る」
秋は実りの季節でもあるので、多くの植物が実をつけます。そのなかで、来年の種まき用の実を採るのも、この季節の仕事。十分乾燥させた稲や豆、野菜の種などを採り保存しておきます。「種を蒔く」は春の季語。
秋といえば、初秋は夏の名残がある中で次第に朝晩が冷えはじめ、まだ本格的な寒さには早い時季です。春と似てはいるけれど、日が短くなるぶん、どちらかというとマイナスなメロウなイメージはありませんか? そんな心象に合う季語をいくつかご紹介しましょう。
○「秋ともし」
秋は日暮れが早くなり、夜が長い。早早として灯る家の灯りは、どこか懐かしく、家路を急ぐ気持ちにさせられる。静かで、ほっとする秋の灯。
○「火恋し」
秋はまだ本格的な寒さではないものの、暖房がほしくなる季節でもある。あるいは、旅などで家を離れているときに恋しくなる家のあたたかさ。
○「すがれ虫」
9月ころから盛んに鳴いていた虫も、10月になる頃には、かすかな鳴き声が聞こえるか聞こえないかくらいになる。秋が終わるのをことさら感じる虫の音。
○「冬隣」
四季にはそれぞれ、○○隣という季語がある。春・夏は明るく希望に満ちた隣、秋は夏の寂しさ、冬は、いよいよという覚悟をもつ隣。
(参照:俳句歳時記(春~新年) 角川学芸出版 角川文庫)
──言葉や漢字の成り立ちを知ることは、日常生活に膨らみを持たせてくれるはず。いかがでしたか?
秋といっても、8月の「立秋」から11月の「降霜」まで約90日、一日たりとも同じ日はありません。秋には華やかさはありませんが、多くの食物が実る感謝の季節。そんな秋を象徴し、知って得する、とっておき季語が「豊の秋(とよのあき)」です。
おおらかで、大きくて、四季のある日本を誇りに思える季語のひとつではないでしょうか。