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梅雨は昼間でも薄暗い日が多くなるものです。雨が降り続いても合間には小やみになり、薄く陽が差し込むことがあります。そんなときの日の光はたとえささやかでも、明るく感じられてうれしいものです。軟らかい青葉の中にふっくりと熟す黄色い梅の実は、太陽の姿が隠れがちな梅雨の時に明るい光をあたえてくれる「梅雨明かり」そんな気がしませんか?
熟した黄色い梅は酸味も和らぎ皮をむけばそのまま食べても美味しいものです。梅の皮をむいて壜に入れ、そこに砂糖をたっぷりかけておけばいつの間にかシロップが溢れるほどあがってきます。シロップを別にして残りの実に砂糖を足して煮込めば梅ジャムに。皮をむくのが少し手間ですが、他は手間いらずでシロップとジャムができる簡単レシピです。梅酒と違いアルコールのないシロップは、ソーダで割ったり氷水で薄めたりと、汗の季節にはごくごく飲める爽やか飲料になりますよ。ハチミツで作るシロップも健康によさそうですね。
梅雨の花といえば「紫陽花」が一番にあがります。雨露をしたたらせた花の毬がゆれている姿は、梅雨が美しいものなんだと思わせてくれます。雨の中で咲く花をあでやかにしているのは、ころころと花や葉の上を転がる水滴ではないでしょうか? 光を集め拡散する水の粒は、明るい太陽の下に咲いているときとは違った美しさを演出してくれます。
5月に咲き始めた薔薇は6月に最盛期を迎え、雨の中でもきれいな花を咲かせます。ローズウォーターやエッセンシャルオイルを取り出すバラは、朝露に濡れた早朝からが摘み時とか。
「急坂になりて抱きし薔薇香る」 大高 翔
雨の中で甘い香りを放って咲いているのはくちなしです。くちなしの実は熟しても割れないことから「口無し」とついたそうです。純白にひらく花から香る清らかな匂いは、湿気を含んだ大気のなかにしっかりと広がります。
「薄月夜花くちなしの匂ひけり」 正岡子規
くちなしの実は染料として食品にも使われています。きんとんのサツマイモや栗が鮮やかな黄色に仕上がっているのは、くちなしの実が使われているからなんです。花の命はじつは計り知れないものなんですね。
じめじめとして鬱陶しいこの季節ですが、見まわしてみれば雨ゆえに美しく感じられるものもたくさんあるなんて、嬉しいですね。